忠次旅日記

「忠次旅日記」、大河内傳次郎、中村英雄、澤 蘭子、伏見直江ほか出演、伊藤大輔監督、日活大将軍、1927、活動写真弁士=澤登翠広島市映像文化ライブラリー、2013.12.23


サイレント映画活動弁士の語りで見るという企画に行ってきた。

映画「忠次旅日記」は、全3巻のうち、第2巻の終わりの1本と第3巻しか残っておらず、上映はその分のみ。最初にデジタル修正の様子が映されているが、かなりフィルムの状態が改善されて見やすくなっていることがわかる。パートカラーだが、彩色されているのはほんの一部。

お話は、赤城の山から逃れた国定忠次が、造り酒屋の番頭に身をやつすがそれも正体がバレ、故郷の国定村に戻ってくる。しかし子分に裏切り者が出てお上に居所が発覚。病気の忠次は動くこともできない。裏切り者は滅びるが、忠次もとうとうお上のお縄にかかるのでしたというもの。

この部分だけでだいたい1時間50分くらいあり、けっこうな長さ。話のテンポは軽快にすすみ、殺陣はキレよく、涙もあって、なかなかおもしろい。しかしなんといっても、この映画の上映を見せるのは澤登翠の語り。

映画自体に字は入っているが、語りはほぼ全編にわたって続く。つまり、サイレント映画は映像付きの語り物だということだ。澤登翠の語りは流暢なばかりか、男、女、子供、ナレーション部分がきちんとメリハリを付けて演じられ、達人の芸を見せつけている。これ一本語るのもかなりのエネルギーだが、この映画が全編あったとすると、3時間では済まないはず。活動弁士の仕事はたいへんだということがよくわかった。基本は台本を見て語るわけだが、この芸を修得するのは長期の修練がいるだろう。

澤登翠は1973年に活動弁士としてデビューして、今年で40周年ということだが、この芸は遠くから訪ねて行くだけの価値があるもの。12月はほとんど福島県内で巡業されていたようだ。主な活動は当然東京なので、また機会を作って見に行きたい。