橘湯(岡山県倉敷市)

「橘湯」、岡山県岡山県倉敷市川西町8-11


コンサートで倉敷に行ったので、せっかくの機会だから銭湯に行ってきた。倉敷市の銭湯は、ネットで探すと何軒か見つかるのだが、水島、玉島、児島に分散していて、倉敷市の中心部で営業している銭湯は、ここと倉敷市鶴形2丁目のえびす湯という2軒しかヒットしない。岡山県は、広島県のような県の銭湯組合が作っているHPがないようで、銭湯をまとめたサイトがない。

しかし、この銭湯には驚いた。広島市で一番古い建物は「勝利湯」だと思うが、それよりもさらに古そうな建物。昔は旅館を併設していたらしく、「たちばな旅館」と書いた文字が建物に残っている。「ラジュウム温泉」と入口の上に書いてあるのだが、まさか掘っているわけはないだろう。

中の造作はさらに驚く古さで、ロッカーは確実に戦前のもの。店のおじさんとちょっと話したのだが、大正時代から営業しているという。倉敷市は水島なんかは別として、中心部が空襲を受けなかったので、昔の建物がそのまま残っているのだ。

清酒 正義櫻」の広告(この蔵元ももうない)、オロナミンCの看板(当然、昔からあったオリジナル)、4時40分から8時半までという、趣味としか思えない営業時間(たぶん、おじさんの労働可能時間)、こり、かゆみに効くクリーム「ワーム」の看板(広島市では勝利湯に同じものがあった)など、時間が40年前くらいで止まっている感じが満載。

浴室の中も、カランだけでシャワーがない。これは古い銭湯の特徴。湯船は3人入ればいっぱい。客はみな常連らしく、店主や客同士で話していた。自分のようなよそ者はめずらしいらしく、店主が声をかけてくれたのでちょっと話したのだが、昔のオーディオマニア、それもコンパクトカセット時代にオーディオを聞いていたそうで、ドルビーシステムとか、メタルテープとか、やたら懐かしい言葉がたくさん出てきた。もう20年くらいオーディオ聞いてないと言ってたけど、音楽好きなら、高い機械でなくてもずっと聞いていればいいのに。

しかしこの銭湯が今でも営業していることそのものが奇跡のようなもの。この銭湯のある町の景色がさらにすごく、タバコ屋の看板を出した雑貨屋(おいてあるのは古い洗剤など)とか、広島市だと絶対になさそうなお店がある。しかもここは美観地区とは方向が違うが、倉敷駅からそれほど遠くない、町中だ。おそるべし倉敷市。市内のもう1軒の銭湯「えびす湯」にもぜひ行かねば。