吼えろ鉄拳

「吼えろ鉄拳」、真田広之千葉真一成田三樹夫ほか出演、鈴木則文監督、東映、1981


これは相当すごい映画。アクションスターとして売り出し中だった真田広之の暴れ方が並大抵のものではない。こんなことまでできるのかという技が連発されて、あぜんとするばかり。

映画としては、まあむちゃくちゃで、最初の場面が、香港で真田広之が追い詰められて蜂の巣にされて死んでしまう。これは真田広之の父ということになってるのだが、わかりにくいよ。

真田広之は、アメリカで育ての親のもとで成長するが、育ての親の死に際に自分の出生のことを告げられる。実の父母は死去。兄も死んでしまい、残っているのは盲目の姉(志穂美悦子)だけ。

それを探して日本にやってきた真田広之、叔父の成田三樹夫を訪ねるが、これが実は大悪党。真田広之一家を全滅させた犯人だ。この成田三樹夫が、一家に伝わるダイヤモンド「シバの女王」を奪い取ろうと企んでいるのだが、それを手に入れるのが真田広之。しかし人質に取られた姉と交換にダイヤは渡してしまい、ついでに姉も殺される。

カタコトの日本語をしゃべる「中国人」の遠藤太津朗と成田三樹夫はダイヤを狙っていろいろと仕掛けてくるが、真田広之は彼らを追って香港へ。そこで国際警察の千葉真一に危ないからやめとけと言われながら、結局一人で悪党を退治するというおはなし。

ロケ地は、神戸、京都、香港。京都のアクションシーンは、かなり笑えるもので、雲水姿の忍者が八坂神社で真田広之を襲撃するところは、コメディーふうの作り。

成田三樹夫は、自分の部屋にヒトラー肖像画(かなり下手)とハーケンクロイツの旗を飾って、ベートーヴェンの英雄をレコードでかけて悦に入るという変な趣味の人。

この映画の見せ場は後半の香港ロケでのアクションシーンで、香港の街でひととおり暴れまくり、2階建てバスの天井で格闘したり、そこから看板に飛び移り、皇族のバスの天井にまた飛び移っている。バスはスピードを落としているが、これは危ない。

香港の屋敷内でのアクションも、空手、棒術、サイ、ヌンチャクなど、いろいろ見せ場が多い。ヌンチャクはあんまり使えてないが、真田広之の技のキレはすばらしい。

最後に、ジープで逃げる成田三樹夫を追いかける場面は、これまた危ない。馬に乗ってヘリコプターから爆薬を投げられる場面、爆発近すぎだ。歩いて逃げまわっている場面も、そこら中爆発の嵐。生身だから、これも危ない。ジープの屋根に乗っているアクションも、いまにも落ちそう。

成田三樹夫を倒して、ダイヤごと海に放り込んだ後、千葉真一にヘリコプターで連行されるが、千葉真一は手錠を外してやって、「グッバイ」とか言っている。どうするのかと思ったら、ヘリコプターから海に放り出す。これもなんなんですかね。

脈絡なくアブドーラ・ザ・ブッチャーがいきなり出てきたり、とにかく内容は盛り盛り。

真田広之は主題歌(作詞作曲は森雪之丞)「青春の嵐(ハリケーン)」を歌っているが、これも相当に変。とにかく、真田広之にできることを全部やらせましたという映画。これは香港映画のアクションにも負けていない。