ヨーロッパ特急

「ヨーロッパ特急」、武田鉄矢、ガブリエル・サニエほか出演、大原豊監督、キネマ旬報社1984


これはある意味、珍品映画。ストーリーは、ほぼ「ローマの休日」そのもので、違っているところは、話がパリからヴェニスに、列車に乗って進行していくということだけ。

武田鉄矢は、まるっきりいつもの武田鉄矢で、ぜんぜんグレゴリー・ペックには似ていない(あたりまえ)。人のマネなんかしたって仕方がないから、それはそれでいい。リメイクというよりは、パロディーみたいなものなので、カッコイイ俳優が出ても意味はない。

共演しているお姫様のガブリエル・サニエは、そこそこに可愛いが、これもオードリー・ヘップバーンにはぜんぜん似ていないし、そもそもそういうレベルの女優ではない。オードリー・ヘップバーンに似ている人なんか、探しても見つからないと思うので、これもまたよし。

ほかの役で驚くようなキャスティングがされていて、マリア・シュナイダールネ・クレマン、ジョルジュ・ムスタキ、ミレーヌ・ドモンジョなんかが出ている。どうやってこんな人々を引っ張りだしてきたのか、まったくわからない。日本経済が調子がよかった時は、ジャラジャラお金が使えたのだろう。

ストーリーはどうでもいいとして、何気ない主役は鉄道。ヨーロッパの鉄道に詳しくないので、車種や路線の場所がよくわからないのが残念だが、いろんな列車が映りまくっている。「世界の車窓から」が始まる前に作られた映画だから、ここでしか走っているところを見られない列車もあるかもしれない。

演出(クレジットには監督とは出ていない)には、大原豊、米山紳、新村良二、粟野裕彦の4人があたっていることになっている。多くの場面に鉄道が映っているので、撮影もけっこう手間がかかっているはず。

おもしろいかというと別におもしろくないが、こんな映画が80年代に作られていたということがレア。