ハイビジョン特集 さらば八月のうた 青春が終わる日

ハイビジョン特集」 「さらば八月のうた 青春が終わる日」


NHKBSプレミアムで2013年1月16日に放送されたものの再放送。劇団M.O.P.の解散公演までのマキノノゾミと劇団員のドキュメンタリー。

M.O.P.は解散してしまったが、26年間も続いたのだ。しかし、1年1回2ヶ月半の時間、劇団員を拘束しておくことができないので仕方なく解散。このくらい演劇界では有名で集客力があっても、経済的には全然成り立たないのだ。テレビや映画でも、アルバイトでも、公演のために長く時間を空けるのがもう限界ということ。

練習中に劇団員を取材することができないので、座長のマキノノゾミ以外の取材はほとんど音声だけ。電話での取材。それくらい劇団員は時間がない。マキノノゾミは、もう50を過ぎているし、ほかの劇団員の大半も40代半ば以上。それでテレビやら映画で食べられている人はいいが、そうでない人もいっぱいいる。

まだ親から仕送りを受けていて、バイトをしながら芝居をやっている人も多いのだ。見ていて胸が痛くてしかたがない。

一番胸に刺さるのは、劇団旗揚げ時のメンバーで、18年前、32歳で劇団をやめて小さな会社をしている清水秀一という人。卒業時に大きな会社に入っていて、マキノノゾミが劇団をやるというので、会社を辞めて劇団員になった。奥さんも元劇団員。この人が、最終公演でゲストとして舞台に出る。小さい役だが、ちゃんとセリフがある。以来、演劇とは縁を切っていて、マキノノゾミも、「辞めた奴はその瞬間から共に語る相手じゃなくなる」と言いながら、公演に呼んでくるのである。

辞める人、残る人、それぞれの考えだが、見ていてつらすぎる。いや、ご本人はつらいとは思ってはいないようなのだが、見てるほうがつらい。同志社大学の昔の部室は今もそのまま物置になって残っていて、昔のポスターや名札がそのままになっている。それも見ていてつらい。

登場する人々が皆うらやましいと同時に、演劇に行かなくてよかったと思う。