ベン・ハー(1925)

ベン・ハー」、ラモン・ノヴァロ、フランシス・ブッシュマンメイ・マカヴォイほか出演、フレッド・ニブロ監督、アメリカ、1925


ベン・ハー」の1925年版。調べたら、これが最初の映画化ではなくて、2番目なのだ。といっても、最初の映画化は短編映画なので、実質的にはこれが最初の映画化である。

基本的なストーリーは、1959年版と同じ。しかし、細かいところでいろいろと違いがある。

一番大きな違いはイエスの描き方。この版でも、イエスの顔が出ることはないのだが、聖書の場面が、映画の基本ストーリーとは別にいくつか出てきて、そこではイエスが正面からは映らないものの、よりはっきり描かれている。1959年版は、あえてイエスの出番は抑えている。

肝心の戦車競走の場面だが、エルサレムではなく、アンティオキアで開かれることになっている。だからポンテオ・ピラトが競技を主催する場面などはなし。また、エステル(ベン・ハーの恋人)は、この戦車競走の時に商人の娘として、ベン・ハーと出会うことになっている。1954年版のようにエルサレムにいた時からベン・ハーエステルが知り合いだったことにはなっていない。

ベン・ハーは、この版では、ローマに武力で抵抗しようとすることになっていて、ユダヤ人の軍団を作ってイエスを救おうとする。それを刑場に引かれていくイエスに呼びかけるのだが、イエスの心の声がベン・ハーに聞こえてきて、それを止めることになっている。

最後の場面も、1954年版でのイエスの復活とベン・ハーの母妹の癒やしではなく、ベン・ハーユダヤ人の軍団に演説してイエスのために祈らせ、エルサレムの町でベン・ハーと母妹がイエスの思い出を語るというもの。母妹は、イエスが刑場に引かれていく時に、イエスに触れられて癒やされることになっている。ちなみに、1954年版では、「らい病」という言葉は出てこなかった(字幕では)と思うが、こっちでは、バンバン「らい病だ!」と字幕が出まくっている。

他にも、ベン・ハーとクインタス・アリアスのローマへの凱旋行進の場面がないとか、いくつか違いがあるのだが、それはいい。

基本的に白黒なのだが、パートカラーで、海戦の後のアリアスとベン・ハーのやりとりや、ユダヤ人たちのイエスについての噂、ラストシーンなどがカラー。なんで肝心の海戦と戦車競走をカラーにしなかったのか?よくわからない。

戦車競走のシーンは、驚いたことに1954年版に勝るとも劣らない迫力。セットはずっと大きく、戦車の走りも、1954年版に決して負けてない。古い映画なのでエキストラの数もすごいのだ。

これを見ると、1954年版がリメイクされた理由がわかる。この版は簡単なピアノ伴奏がついているだけのものを見たのだが、戦車競走の場面を見れば、これをカラーで、ちゃんとした音響をつけて作らない手はないと思うだろう。サイレントでこの迫力なのだから、ウィリアム・ワイラーにはたいへんなプレッシャーがあったはず。それであの映画を作ったのだからやはりエライ。

これを見ていると、頭の中で1954年版の音楽が鳴る。サウンド・トラックCDS買わなきゃ。