ゴルゴ13(1973映画版)

ゴルゴ13」、高倉健モーセン・ソーラビィ、ジャレ・サム、プリ・バナイほか出演、佐藤純彌監督、日本、イラン、1973


これはまた変な映画。ゴルゴ13の実写映画は2本あるが、先に制作された高倉健バージョン。この映画、高倉健以外は日本人がまったく出てこない。イラン人の名前はよく知らないのだが、ゴルゴ以外全部イラン人のようだ。キャサリンとか、ワルターとか、ダグラスとか、西洋人っぽい出演者の名前が出てくるのだが、見た目はみんな同じなのでたぶんイラン人。

麻薬やら何やらなんでもやっている悪の帝王みたいな男、マックス・ボアが今回のターゲット。いつも美人を侍らせて、肩にはオウムをとまらせている。このマックス・ボアが画面に映るまでが長い長い。顔は謎ということになっているので、なかなか出てこないのだ。そもそもタイトルロールまでに20分くらいかかっている。劇場で見た人は、びっくりしたはず。

高倉健が英語をしゃべるのかと思ったがご安心。高倉健は全編、流暢な日本語しか話さない。もちろん、イラン人も全員日本語しか話さない。それはいいが、声をあてているのはみんな有名声優ばっかりなので、イラン警察の警部は山田康雄にしか聞こえないし、依頼人からゴルゴにつけられた助手(愛人?)のおねえさんは平井道子にしか聞こえない。マックス・ボアは富田耕生にしか聞こえない。この時点で相当変な感じ。

映画はオール・イランロケなので、テヘランや、イスファハンペルセポリスほか、イランの名所が映りまくっている。自分はイランのことはほとんどわからないのだが、この映画を見て一番喜ぶのは、ちょっと年のいったイラン人だろうと思う。

ゴルゴのことなので、依頼人から派遣されたおねえさんとはちゃんと寝るのだが、そのおねえさんが敵に捕まって人質にされても知らんふり。仕事と関係ないことで情を引きずったりするようなことは一切なし。ついでにイラン警察の警部は、奥さんをマックス・ボアに捕らえられた上に、銃撃戦で死んじゃうのだが、あれだけ必死でゴルゴを追っていたのに、最後の言葉は「ゴルゴ、マックス・ボアを殺してくれ」でおわり。

マックス・ボアがゴルゴを始末するために呼んできた殺し屋、ワルターとダグラスはいろいろ仕掛けてくるのだが、ゴルゴが荒れ地に孤立したところでヘリコプター(イラン空軍協力)から撃ってくる。もちろん、ゴルゴがヘリコプターを数発撃つと、そのまま墜落。

最後は、ゴルゴがマックス・ボアを射殺しておわりなのだが、ゴルゴはなぜか行き掛けの駄賃か、オウムまで射殺。オウムくらい生かしておいてやって。

脚本執筆には原作者のさいとう・たかをご本人が入っており、監督は佐藤純彌だから、おもしろくなりそうなのだが、はっきり言えば、けっこう退屈。ゴルゴはあんまり話さないし、イラン名所図鑑以外は、銃撃戦、拷問、ベッドシーンだけで、なんてことのない映画。しかしこれを見てしまうと、1977年の千葉真一バージョンも見たくなる。