空気の無くなる日(1949)

「空気の無くなる日」、深見泰三、河崎竪男、花沢徳衛ほか出演、伊東寿恵男演出、日本映画新社、1949

これは日本映画専門チャンネルの「特撮国宝」で、鷺巣富雄の初期の作品として放送していたもの。小説は、たしか教科書か何かにのっていたはずで、昔読んでいるが、映画版があるとは知らなかった。

最初の場面に、地球と他の天体の位置関係の説明や、地球と太陽の関係が変われば地球が酷暑になったり氷漬けになったりするという説明があり、その部分が簡単な特撮になっている。アニメと静止画を加工して見せていて、初期の特撮の水準がちょっとわかるが、この時点で「ハワイ・マレー沖海戦」はあったので、それに比べるとかわいいもの。

ストーリーは、小説のとおりで、明治42年ハレー彗星が接近してきた時に北陸の村で起こった騒動のおはなし。52分の中編である。彗星が地球に近づくと、5分間だけ空気がなくなるという噂がたち、小学校の校長先生をはじめみんながその噂を信じこんでたいへんな騒ぎに…というもの。5分間息を止めているのは無理ということがすぐにわかるので、村の自転車屋にチューブを買おうと村人が殺到するのだが、自転車が法外な値段をつけるので、買えたのは地主だけ。いよいよ空気のなくなる日の12時が迫ってくる。

花沢徳衛自転車屋のおやじ。チューブを法外な値段で全部地主に売りつけたのだから、この話で一番得をしたのは花沢徳衛である。しかし、これはあまり強調されていない。それを強調したら教訓話にならないしね。

ちょっとひっかかるのは、「空気のなくなる5分間」は昼間だったはずで、小説でもそのようになっているのだが、この映画ではその場面が暗い室内になっている(外光もない)ので、まるで夜のように見えること。外の景色では太陽が出ているので、正午だということはわかるのだが、どうも混乱する。

たしか小説では、小学生がみんないるところでその時間が来ることになっていて、地主の子供がひとり、大きなチューブを抱えてぼつんと立っている挿絵がまぬけなオチになっていたのだが、そのパンチがないことはちょっと残念。

とはいえ、明るい光の中で、家畜や子供がとんだりはねたりしているこの映画のラストもこれはこれでよし。小学校の女教師が感じいい。