大阪西成 貸しロッカーブルース

ドキュメント72hours」、「大阪西成貸しロッカーブルース」、NHK総合、2013.9.13


同じ場所に72時間カメラを置き続けてドキュメンタリーを作るというのがこの番組。先週は千葉の健康ランドだった。この回は大阪市西成区あいりん地区、釜ヶ崎にある「貸しロッカー屋」がネタ。

この「富士屋ロッカー」という店、大阪府大阪市西成区太子1丁目3-24にある。地下鉄動物園前駅と、阪堺電車の南霞町駅の間。時間貸しもするが、基本は月貸しで、ロッカーの大きさに応じて1000円から3000円くらいまでの料金。こういう施設を利用するということは、ドヤに泊まるお金もない、つまりホームレスということ。年末年始を除いて年中無休、朝5時から夜8時まで営業。日雇いの労働時間に合わせている。

多くの人が取材拒否。これはあたりまえ。顔が映る人も少ない。乗り捨てレンタカーの回収をしているというおじさん、元は営業職だったそうだが、CDを何枚か持っている。これがブルックナーの9番だ。ショパンモーツァルトもある。クラファンだったのか。ショパンは名曲集、モーツァルトは、ピアノ協奏曲の21番と23番を持っている。この生活でそんなにたくさんのCDが持てるとは思えないから、何百回も聴いているだろう。自分がCDの中から10枚だけ選んで後は捨てろと言われたら何を持っていくか。考えてしまう。このおじさんは、蔵書もロッカーに入れていて、ポー、ジッド、トーマス・マン、英会話の本がわかる。住所なしでは、図書館の貸出券も作れないだろう。これはつらい。

カメラは西成労働福祉センターや、公園での夏祭りの様子も映している。当然顔はぼかしている。

一番切ないのは、長期間料金を払わないので、ロッカーの内容を整理されてしまう人。料金を払わないとまずロッカーに南京錠をかけられ、勝手に開けられなくなる。それでも払わないと中身を整理。整理されてしまうロッカーの数は年間200以上あるという。りっぱなことに、ロッカー屋の店主は、整理した荷物を捨てずにそのまま保管しているのだ。永久に保管というわけにもいかないと思うが、場所だけ取って、受けだされるあてのない荷物がどんどん増えていくのだからたいへん。これはこの商売を半分義侠心でやっているということだ。

客は、もう使えない保険証や、錆びついた大工道具を大事に持っている。自分が働いていることの証明みたいなものだ。ここに来ている人は生活保護を受けることをよしとせず、働き続ける人たち。自分の何十倍もえらいと思う。