戦後SF事件史

長山靖生『戦後SF事件史 日本的想像力の70年』河出書房新社、2012


『日本SF精神史』の著者による、日本SF史。労作である。

戦後すぐの時点から、現代までの通史として書かれているし、狭い意味でのSFだけでなく、読売アンデパンダンサド裁判、アングラ演劇のような、「一体SFと何の関係があるの?」といいたくなる事象も言及されている。著者としては、SFを生み出した苗床を作ったのは、それらの文化的事件だという立場なのだろう。

SFも小説以外の、映画、アニメ、ファンダム、編集者など、全体を俯瞰するように書かれており、作品だけでなく作家の人間関係とか、いったいどこで調べてきたのかよくわからないようなことにも言及されている。

新しいことについては、エヴァンゲリオンラノベ東日本大震災原発事故まで書かれているので、300ページにも満たないこの分量で、よくここまで書いていると驚くばかり。著者の政治的立場がちょっと臭いので、その辺はスルーするが、力技であることは疑いない。

自分としては、「愛国戦隊大日本」事件の細かい顛末がだいたいわかったのが収穫。「大日本」への批判側は、政治的立場からのアホみたいなものだけではなく、ファンダムの性格づけや商業主義をどう扱うかなど、いろいろな問題がからんでいたことがわかった。

戦後すぐのことは別として、著者がSFファンとしてリアルタイムで体験したことを盛り込んでいるところも強み。同時代史としてもよく書けている。