シシリアン(1969)

シシリアン」、ジャン・ギャバンアラン・ドロンリノ・ヴァンチュラほか出演、アンリ・ヴェルヌイユ監督、フランス、1969


この映画はずいぶん昔、子供の頃にテレビで見たが、ひさびさに見るとやっぱりおもしろい。子供の頃に見た場面のいくつかを思い出してなつかしかったのもあるが、見せ場がたくさんあって退屈させない。

まずアラン・ドロンの護送車からの逃走シーン。ここが緊張感があって最初から引き込まれる。逃げたドロンが、ジャン・ギャバンのマフィア一家と顔合わせをする場面も、ドロンとギャバンの間に火花が散っていて、ただならぬ雰囲気。

ドロンを捕まえたル・ゴフ警視(リノ・ヴァンチュラ)もいい顔してるわ。カフェで働くドロンの妹に、監視がついていることをわざわざ知らせてやるところが渋い。警官殺しのアラン・ドロンを捕まえたのがル・ゴフで、ドロンを憎んでいるのだが、その憎しみは悪に対する公正な憎しみというところがいい。

ドロンが獄中で手に入れた、宝石展会場の監視装置の図面から、宝石展襲撃をたくらむジャン・ギャバン一家だが、パリで展覧会を襲撃するのが無理と見るや、輸送の飛行機(乗客も乗っている普通の民間機)をハイジャックしてしまえとなるところがぶっ飛んでいる。なんとマフィアの中に飛行機の操縦ができる者がいるのだ。そんなのどこで覚えたのか。

この飛行機に、輸送の警備員にすりかわったドロンとジャン・ギャバン一家がまぎれこんでいるのだが、飛行機の中で普通にピストルを出している。60年代後半って、金属探知機でチェックしてなかったのか?しかも、飛行機がニューヨークの空港に降りると思わせて、建設中の高速道路に着陸し、宝石をかっさらうという手口。もちろんこのへんの撮影は合成なのだが、これは子供心にびっくりした。まあ、高速道路に大型旅客機は降りられないですが。

まんまと宝石を盗んだところまではいいが、ここから急展開。マフィアの長男の嫁とドロンが不倫関係にあることが、子供の口から暴露されてしまう。ギャバンは、罠をしかけてドロンをパリに呼び出すが、一枚上手のドロンはこれを逆手に取って、ギャバンの息子たちはみな空港で捕まってしまう。

分け前を要求するドロンとギャバンの一騎打ち。ドロンもかっこいいが、ギャバンはさらにその上を行く。ドロンの浮気相手、イリーナ・デミックが付いて行くのだが、ドロンをかばおうとするデミックを一撃で射殺した後、ドロンも蜂の巣にして殺してしまう。泥まみれで倒れるドロンがまたかっこいいわ。

ギャバンが、自分の工場(ギャバンの表の仕事)に帰ってくると、そこに待っていたのがリノ・ヴァンチュラギャバンは黙ってヴァンチュラに引っ張られていくが、後ろ姿も言うことなし。ギャバン、ドロン、ヴァンチュラと3人揃った豪華さで、3人ともどの場面でも隙がない。子供の頃1度見ただけで覚えていたのも当然か。