刑事ジョン・ブック/目撃者

「刑事ジョン・ブック/目撃者」、ハリソン・フォード、ケリー・マクギリスほか出演、ピーター・ウィアー監督、アメリカ、1985

前から見ようと思っていてやっと見られた映画。これはおもしろい。

アーミッシュの生活を描いた映画」ということくらいしか知らなかったが、アーミッシュのことを描いた部分だけでなく、ハリソン・フォードが追われるプロットもおもしろい。

話の発端は、ケリー・マクギリスとその子供がアーミッシュの村(ペンシルベニアにある)から、親戚を訪ねて行こうとして、子供がフィラデルフィア駅のトイレで殺人事件の現場を目撃してしまうこと。刑事ジョン・ブック(ハリソン・フォード)は事件に関わりたくないケリー・マクギリスを強引に説得して捜査にかかるが、たまたま警察署に貼ってあった新聞記事の写真で、殺人事件の犯人が麻薬課の捜査官だとわかってしまう。

ハリソン・フォードは、本部長のシェイファーにだけ告げるのだが、警察署からの帰りにいきなり犯人の麻薬課捜査官が自分を見つけて撃ってくる。ハリソン・フォードは撃たれて重傷を負いながら逃げるのだが、本部長にしか話していない真相を相手が知っているということは、本部長と犯人はグルだとさとり、目撃者の子供を守ろうと、ケリー・マクギリスと子供を車に載せて、アーミッシュの村まで逃げていく。

ハリソン・フォードは村で動けなくなってしまい、アーミッシュたちに面倒をみてもらうことになる。銃弾が腹に命中しているのに、医者抜きでこの怪我を治せるとは、アーミッシュの医術はたいしたもの。本当はアーミッシュたちはよそ者を村に入れたくないのだが、外に出してしまうと子供の見が危ないのでしかたないのだ。

ハリソン・フォードは、ケリー・マクギリスとだんだん仲良くなっていくのだが、これがケリー・マクギリスの義父には気に入らない(ケリー・マクギリスは未亡人)。アーミッシュの中ではダンスや音楽も禁止なのだ。しかしアーミッシュの中で生活しているうちに、ハリソン・フォードはだんだん村に溶け込んでいく。

警察に残ってハリソン・フォードと連絡をとっていた友達が本部長にさとられて殺されてしまい、ハリソン・フォード自身も村の外の人間とトラブルを起こしたことで居場所を知られてしまう。本部長と部下たちが銃を持ってハリソン・フォードを殺しにやってきました。さあたいへん、という展開。

アーミッシュは、暴力が嫌い、銃は大嫌いくらいはいいとして、音楽嫌い、快楽の追求すべて嫌いと来ており、アーミッシュの話す言葉もドイツ語の方言らしいが、ドイツ語には聞こえない(英語は当然使えるので、アーミッシュはみんなバイリンガル)。だから、ハリソン・フォードとケリー・マクギリスもちょっと仲良くなりかけるのだが、それ以上には発展しない。いくら男女の情があるといっても、ハリソン・フォードがずっとここで暮らすのは無理なのだ。

最後にハリソン・フォードが村を去っていく時に、ケリー・マクギリスの義父が、「イングリッシュに気をつけろ」と声をかける。イングリッシュというのは、「村の外の人間」ということ。文明社会の中でこういうコミュニティを長く維持するのはたいへんだと思うが、アーミッシュの村と外の世界が少しだけ触れ合って、お互いに思い出を残しながら別れていくというこの映画のストーリーが、違う世界の人が出会うことの難しさをうまく表現していて、コンパクトでいいおはなしになっている。佳作と言われるだけのことはある。