ノストラダムスの大予言(1975)

ノストラダムスの大予言」、丹波哲郎由美かおるほか出演、舛田利雄監督、東宝、1975


話に聞いていた「ノストラダムスの大予言」映画版。機会があってとうとう見ることができた。これはなかなかおもしろい。

内容的には、70年代にたくさん制作されていた「地球終末」ものなので、そこはあまり驚かない。しかし、気持ち悪さてんこ盛りの怪物が続出。巨大ナメクジ、鳥を食べる巨大植物くらいはかわいいもので、ニューギニアの原住民は放射能汚染のおかげで食人族に変身、って、やっぱりそこはマズイよね。せめてニューギニアって言わなければいいのに…。

原住民に食われそこなった、国連第一次調査団のメンバーは、洞窟の中で肉が腐ってボロボロになっている。肉が腐って骨が見えている状態でなんで生きているのかというような野暮はいわない。丹波哲郎率いる第二次調査団は、武士の情けとばかり、ボロボロで死にかけている第一次調査団を射殺しまくり。

空ではSSTが爆発してオゾン層が壊滅、地上は火の海になり、人間はバタバタ死ぬ。大旱魃と大洪水が世界中で頻発し、食料生産は途絶。テレビは、「日本にはあと1年分の食料備蓄がありますから、みなさんご安心ください」と連呼しているが、1年分しか食料がないのだから、群衆はパニックを起こして略奪しまくり。いろいろ爆発していて、もちろん原発も爆発。

閣議で大臣だちは自衛隊を出せと迫るのだが、山村聡の総理大臣は「彼らは暴徒ではありません」と断固として拒否!最近、「華麗なる一族」のおかげで山村聡が悪人に見えてしょうがないのだが、この映画で目が覚めた。山村聡はやっぱりいい人だ。

首相以下、大臣が並ぶ国会議事堂では、丹波哲郎が大演説。というか、丹波哲郎はこの映画で最初から最後まで演説しまくっている。幕末や太平洋戦争中にも丹波哲郎の先祖があらわれて、ノストラダムスの予言をかましまくっているのだ。江戸時代や戦争中の日本人がそんなものを知ってたのか!まあ丹波哲郎だから当然である。

丹波哲郎の演説は気合が入りまくり、核戦争による人類滅亡を大予言。この映画では、1999年のカタストロフ(これが英語タイトル)は核戦争のこと。核戦争の場面はかなり「世界大戦争」からの流用。ちゃんと撮影している部分もあるけど。そして核戦争の後、問題の「軟体人間」(核戦争の放射能で変異したミュータント)が出現。ヘビを踊り食いしている。その後軟体人間同士で取っ組み合い。せっかくだから軟体人間もお互い、むしゃむしゃむさぼり食えばよかったのに。

最後は、山村聡首相が、「事態は絶望的ですが、わたしたちは今こそ希望を捨てず、立ち上がらなければなりません」と雄々しく演説。丹波哲郎の目がうるんでいるところでおしまい。

この映画の重要ポイントは、丹波、山村の大演説に加えて、岸田今日子があの声でえんえんと朗読する「ノストラダムスの大予言」(もちろん五島勉訳)の章節。これを公開時に見た人は、ノストラダムスは何でも知っていたのかと感動したことだろう。そして、映画全体を盛り上げる冨田勲の音楽!これはCDがちゃんと売られているようだが、たいへんな傑作。シンセサイザーとオーケストラを縦横に使い倒して、「人類終了!」を音楽で演説している。

ニューギニアの食人種と軟体人間は確かに見ものだが、見どころはそこだけではない。ソフトは日本国内では高値だが、外国製は入手可能なものなので、見る機会はちゃんとあるのだ。