新国立劇場 アイーダ

ヴェルディアイーダ


アイーダ:ラトニア・ムーア
ラダメス:カルロ・ヴェントレ
アムネリス:マリアンネ・コルネッティ
アモナズロ:堀内康雄
ランフィス:妻屋秀和
エジプト国王:平野 和
伝令:樋口達哉
巫女:半田美和子

指揮;ミヒャエル・ギュットラー
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:東京シティ・バレエ団
管弦楽:東京交響楽団

演出;フランコ・ゼッフィレッリ


新国立劇場アイーダ、このゼッフィレッリのプロダクションは、1998年の初演以来、4回目の公演とのこと。こちらはこれが初見なのだが、何回も再演される理由には納得した。

最近はやりのわかりにくい解釈を要求するようなところは基本的になし。セットは古代エジプトはこうだっただろうというものを忠実に描いている。天を衝くような神殿の柱、とにかく大勢の合唱隊とバレエ。舞台に上がる人数だけで300人くらいいるらしい。金色ピカピカの衣装や装飾は、とにかく派手。しかし派手なだけではなく、石造っぽく塗ってあるやや黄色がかったセットによく映えている。

大人数なので、2幕の「凱旋」の場面は圧倒的な迫力。本物の馬が2頭も出てきた。この場面ではラダメスは乗馬で登場。歌手はいろいろやらなければならないのね。ファンファーレ用の特殊ラッパも12本くらいあったような。これで凱旋行進をやるのが圧巻。こんな豪華な演出は、日本ではここだけ。外国の大きなオペラハウスでもそうそうはできないだろう。

4幕、ラダメスが生きながら地下墓地に埋葬される場面も、ラダメスが地下におりていくと、舞台が全体でせりあがってきて、地下墓地と地上部分の2層になっているという豪華なもの。これはよその劇場ではできないところ。見せ方の工夫がゆき届いている。

歌手は、一番よかったのがアイーダ役のラトニア・ムーア。黒人だ。背は低いが、声質が滑らかでよく響く美声。この人は実は代役で、前にもMETで代役としてアイーダを歌ったらしく、実力だけでなく運もあるという人らしい。ラダメスのカルロ・ヴェントレも軽い感じだが、よく声が出ていた。アムネリス役のマリアンネ・コルネッティは、これもいい声で、かつ演技がうまい。イヤミで高飛車、しかし惚れると弱いお姫様にまさにピッタリな人。ラトニア・ムーアは健気なお姫様なので、好対照になっていた。この2人が特にいい配役。

新国立劇場のオペラはふつうは1演目5回公演なのだが、これは7回やることになっている。自分が行ったのは、チケットぴあの冠公演で、チケットぴあでしか買えないというもの。客席は完全に埋まっていた。やはり人気のプログラムなのね。確かに、「ここでしか見られない」という舞台芸術の最も重要なポイントを押さえた公演。1万円ちょっとの席で見たが、この内容を見られたことがありがたい。行けたことを果報に思える舞台。