砂漠の鼠

「砂漠の鼠」、リチャード・バートン、ジェームズ・メイスンほか出演、ロバート・ワイズ監督、アメリカ、1953


第二次大戦の北アフリカ戦線もの。ジェームズ・メイスン主演「砂漠の鬼将軍」の姉妹編みたいなものだが、こっちの主役は英豪軍。いちおうジェームズ・メイスンが同じロンメル将軍役で出てくる。

1941年のトブルク攻防戦。トブルク防衛に当たっていたのはオーストラリア軍第9師団。ドイツ軍に包囲されて士気のあがらない部隊にやってきたのは、イギリス軍のマクロバーツ大尉。マクロバーツは、厳しい態度で部下をバシバシ督戦。トブルクを攻撃してきたドイツ軍をワナに引きこんで撃退。

そのうち英豪軍はドイツ軍の弾薬集積所を少数の兵で襲撃。見事集積所を破壊するが、マクロバーツは部下1人と逃げ遅れて、ドイツ軍の捕虜になる。マクロバーツは治療しろ!と元気に怒鳴っているのだが、そこに負傷したロンメル元帥ご本人が登場。マクロバーツと英豪軍を「鼠」と呼んで、トブルクなんか簡単に潰せるというのだが、マクロバーツもロンメルに一歩も引かずに反論する。

この場面、マクロバーツは少佐で、相手は元帥なのだから、もちろんマクロバーツはきちんとした言葉遣いをしているのだが、字幕の日本語訳ではかなり乱暴な口のきき方をしているのにはがっかり。おまけに、この話はトブルクが陥落する前のことになっているのだから、ロンメルはまだ元帥にはなっていないはず。しかし、ロンメルの階級章は元帥のもので、要するに考証をちゃんとやってないということ。戦争が終わってから10年もたっていないのに、これではがっかり。

その後、後送されるためにトラックに乗せられたマクロバーツは、英軍機の空襲でトラックが横転したのに乗じて、うまく脱出、味方陣地に帰ってくる。トラックが機銃掃射で炎上しているのに、乗せられている捕虜が無事なのもおかしいし、砂漠の中をどうやって歩いて味方陣地に帰ってきたの?

マクロバーツが戻ってきたので、トブルクの豪軍は勇気百倍。しかしドイツ軍の攻撃は容赦なく、兵は減り、弾薬もほぼ尽きて後退するしかないというところで、味方の戦車部隊が増援にやってきた。英豪軍はトブルクを守りぬいたのでした、というおはなし。

しかし、実際には1942年の半ばにはトブルクは陥落してしまうのだから、この終わらせ方もかなり強引というかおかしい。戦闘シーンはけっこう迫力があって、ほぼ戦闘シーンのない「砂漠の鬼将軍」よりはマシだが、どうも脚本がおかしい。「砂漠の鬼将軍」で敵を褒めちゃったものだから、その分バランスを取ろうとして、ムリをしすぎたのかもしれない。