ピンクレディーの活動大写真

ピンクレディーの活動大写真」、ミー、ケイ、石立鉄男田中邦衛秋野太作ほか出演、小谷承靖監督、東宝、T&C Music、1978


ピンクレディーのプロモ映画。ピンクレディーは、本人役として出演。ニューヨークに滞在しているところに、日本ではピンクレディー主役で映画をつくる話ができていて、その企画会議で、プロデューサー(石立鉄男)、脚本家(秋野太作)、監督(田中邦衛)の3人がホテルで相談。

脚本家はメロドラマ、プロデューサーはSF、監督は西部劇を作りたがっていて、その3つのストーリーが勝手に進行し、合間合間にピンクレディーのライブ映像が入るというメタな構成。基本的に、ピンクレディーは歌は歌えるが、芝居はあんまりできないので、芝居部分は大したことなし。また、石立、田中、秋野の3人の小芝居は、ほとんど猿芝居も同然で、まるっきりすべっている。

なので、いまこの映画をピンク・レディーを知らない人が素で見たら、昔あったアホなアイドル映画の1つで終わってしまうだろう。しかし、この映画が実際に公開されていた時は、ピンク・レディーの人気は絶頂期(をちょっと過ぎたころ、映画でかかっている一番新しい曲は「カメレオン・アーミー」)で、今のAKBだって問題にならない勢いだったのと、石立鉄男秋野太作田中邦衛(これはちょっと別だが)に加えて、田中健岡本富士太なべおさみといった人たちは、当時は青春モノ、ホームコメディの主役俳優だったから、これだけのキャストがピンク・レディーの脇にまわってアシストするということ自体が、とてもインパクトのあることだった、という事情がわからないとこの映画が作られた意味がちゃんと把握できないだろう。

実際、今見てもピンク・レディーのライブ映像は強烈な威力。それまでのアイドル歌手の世界からはまったくカラーが違う歌、衣装、振り付けは色あせていない。その後のアイドル歌手の道筋をつくった偉人である。だったらただのライブをつないだ映画にすればいいだろうということなのだが、ピンク・レディーのヒット曲の数を考えると、それでは尺が足りないということと、公開当時の客にとっては、ピンク・レディーが、映画に出てるということだけで何が何でも劇場に、ということだったのではないかと思う。

原案・脚本はジェームズ三木。大物だが、この映画がつまらない原因のほとんどは、脚本にあるので罪は免れない。とはいえ、ピンク・レディーの映画はこれ1本しかないので、おもしろいかどうかは関係なく貴重な記録。