霞が関残酷物語

西村健霞が関残酷物語 さまよえる官僚たち』中公新書ラクレ、2002


この本は平積みされていたので新刊だとおもって買って読んでみたら、どうも役所の部署の名前がおかしいので奥付を見て2002年刊行とわかった。やられた。しかし2011年に第4版が出ているので、このシリーズ(ラクレ)の中ではロングセラーだろう。実際、読み応えはある。

著者は1965年生まれ。東大工学部を卒業後、技官として当時の労働省に入省。その後1992年に退官。現在は作家という経歴の人。中の人だったので、役所の事情はひと通り通じている。

構成は、キャリアとノンキャリア、事務官と技官、人事院の位置づけと実施されていない職階制、政治家との関係、官僚の意識と仕事といったもので、日本の官僚制について、実態を概観するには手頃な本。特に著者はまだ若い時に退官しており、この本を書くにあたって年齢の若い官僚にもいろいろとインタビューを取っているので、そのクラスの官僚の仕事や考え方については細かく書かれている。

という著者の調査スタイルの裏返しとして、この本に書かれているのは、「若手キャリア官僚の考え方と行動」であって、それ以外のものではない。特に、財務省が政治家をどのように利用しているか、官僚側が政治家をどのようにコントロールしているか、といったような話はほとんど出てこない。そういうことはインタビューだけではわからないので、仕方ないといえばそうなのだが・・・。

限界はあるが、日本の官僚制を内部に近い人から見た本としては、きちんとまとまっているし読みやすい。現在でも一読の価値はある。