島田陽子に逢いたい

島田陽子に逢いたい」、島田陽子甲本雅裕ほか出演、いまおかしんじ監督、レジェンド・ピクチャーズ、2010


何もかも微妙な映画。タイトルどおり、島田陽子が主役なのだが、島田陽子が本人役で出てくる。役はわがままで、甲本雅裕(こっちもおじさんだ)から徹底的に慕われているというもの。なんで島田陽子なのか。島田陽子の絶頂期は1970年代末で、その後いろいろ迷走したあげくに、老女役として上手に老けることには失敗した人である(この点、吉行和子とは大違い)。そういう女優があごかれの対象になるのか?

実際に見ていると、「昔の有名女優」ではなく、今追いかける対象という設定はキツすぎる。島田陽子ご本人にはそういうことを吹っ飛ばすだけの性格的な強さはありそうだが、見ている方にとっては話は別。「おばさん」という言い方ですら甘いと思う。

それを追っかけるのが甲本雅裕というのも微妙だし、島田陽子とハダカでイチャイチャしているところは、まあちょっと可愛いので許すが、いくら甲本雅裕が中年だって島田陽子を追いかけるというのはリアリティなさすぎる(これがはるかに年長の老齢の俳優なら、まだわかるが)。しかも甲本雅裕はガンで死にかけというベタな展開。実際に最後は死んじゃうし。死ぬ前に追いかけるのが、島田陽子?なにか、ひねりのきいた仕掛けがあるのかと思っていたが、そういうものは何もなし。だったら、その辺のスナックのおねえちゃんでも追いかけるでしょう。

さらに余計なのは、映画の始めと終わりに入っている、島田陽子へのインタビュー。これは劇中のエピソードとしてではなく、女優島田陽子へのインタビューという形になっている。しかもインタビュアーが生島ヒロシだし。なぜ?そこで島田陽子がはじけて自分をさらけ出すならともかく、ここでも目一杯芝居がかっているのだ。そもそもこの場面を入れる必要があるのだろうか。監督はよほど島田陽子に愛情かそれとも恨みでもあるのだろうか。

自分は島田陽子が一番輝いていた時期(SHOGUNとか、白い巨塔(フジテレビ、田宮二郎バージョン)、犬神家の一族(1976年の映画版))をリアルで知っているし、その後のヌード写真集をめぐる騒動も見ているので、こういうことになっても驚きはしないが、見ていてつらい。特に、去年か一昨年、スカパーでSHOGUNの再放送があったときにご本人が出てきて、出演時のエピソードを回想されていて、お元気なのを見て安心し、同時にかなりの老け方に驚いてもいた(年齢相応だが)のでよけいにそう思う。

なので、映画に出すのなら、あまり痛い出し方はやめてあげて欲しい。これはほとんどイジメでしょう。