愛の亡霊

愛の亡霊」、吉行和子藤竜也ほか出演、大島渚監督、日本、フランス、1978


吉行和子がエッセイで、藤竜也のことをたいへんほめていたので見てみたが、けっこうおもしろかった。

藤竜也は兵隊がえりで、吉行和子田村高廣の家に入り込み、吉行和子が赤子に乳をやりながら眠ってしまったのを見て、犯してしまう。あとは吉行和子もその気になってわりない仲になってしまうのだが、そうなるとダンナの田村高廣が邪魔になり、飲ませてから首を締めて殺してしまう。

吉行和子が、死体はどうするのというと、東京に働きに行ったということにしてしまえと言って、実物は古井戸に埋めてしまう。さてそれから時間が立ちましたというところからが本題。

藤竜也は金がないので、山から落ち葉をさらってきて燃料にしているのだが、どうも死体を埋めた古井戸が気になるらしく、しきりに古井戸に落ち葉を放り込んでいる。

そのうち、田村高廣が幽霊になっていろんなところに現れ、2人はあわてだす。吉行和子は家に火をつけて自殺を図るしまつ。しかも庄屋に、藤竜也が古井戸に落ち葉を投げ入れているところを見られてしまう。

結局藤竜也は庄屋も殺してしまうのだが、これで周りの疑いはますます強くなる。死体を埋め替えようとするが、失敗。グズグズしているところに警官に捕まり、拷問のあげく自白。田村高廣の死体が掘り出され、2人はめでたく死刑になりました。


吉行和子は、当時40歳をすぎていて、藤竜也はそれより少し年少だが、2人とも色気出しまくり。とはいえ、藤竜也が二十歳という設定は苦しいが…。まあそのへんは色気と演技力でカバー。

やっていること自体は極悪だが、幽霊の田村高廣を含めて登場人物はかなり間抜け揃い。こんなのでいいのかなあと思ってると、自分で墓穴を掘って捕まってしまうというもの。なんだかこの間抜けさと一生懸命さがせつないわ。

音楽は武満徹で、気持ち悪いがいい音楽。吉行和子はまだピンピンしているし、藤竜也も元気だ。大島、田村はさすがに死んでるが。キャストは、非常に豪華で、佐藤慶伊佐山ひろ子小山明子、川谷拓三、殿山泰司ほか。怖そうで笑えるところもいい。