超常現象の科学

リチャード・ワイズマン(木村博江訳)『超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか』、文藝春秋、2012


これは新聞の書評で取り上げられていたので読んでみたが、書評での評価のとおり、非常におもしろい本。著者は、プロのマジシャンで、そのキャリアを捨ててエディンバラ大学で博士号取得(超心理学)。現在、ハートフォードシャー大学教授という人。

この本の原題は"Paranormality"なので、翻訳タイトルどおり。内容は、超常現象とされていることの解釈がどのくらい歪んでいるか、つまり超常現象は「ある」という説の根拠とされてきた事実が、実際には超常現象の証拠にはならないということを示すというもの。

内容は、占い、幽体離脱、念力、霊媒師、幽霊、マインドコントロール、予知能力というネタにおよぶ。心理学で説明できるネタに限定されていることがポイント。まあ、著者は学者なのだから当然だが。

この本の価値は、超常現象に対する懐疑論そのものよりも、それを提示する著者のテクニックの巧みさによるところが大きい。読者がおもしろがるようなネタの出し方、それに対する科学的な解釈=タネ明かしがどの章でもきれいに決まっていて、プロのマジシャンのテクニックはこういうものかと感心させられる。

最後の超常現象をロマンティックに考えようとする人に対するひとことも、きれいに決まっている。「と学会」の本がアマチュアにできる楽しみを見せてくれるのに対して、こちらはプロの芸。

著者には自己啓発メソッドの学問的な検証本、『その科学が成功を決める』が翻訳されているそうなので、そちらにもかなり食しが動いている。