突撃

「突撃」、カーク・ダグラス、ジョージ・マクレディ、アドルフ・マンジューほか出演、スタンリー・キューブリック監督、アメリカ、1957

キューブリックの突撃、いまごろになって見た。

前半、塹壕の描写がとてもいい。とにかく狭く、地面との間には板1枚。ところどころ水が溜まり、居心地の悪そうなこと、この上なし。そしてビュンビュン飛んでくる敵の砲弾。こんなところに数ヶ月だか数年だか置いておかれれば、神経症もむべなるかな。

この場面があるので、突撃後のよけいにひどい惨状と後半の法廷劇の場面がひきたっている。突撃命令が出たあとは、とにかく砲撃でぐにゃぐにゃになった地面を走る走る。当然、突撃の間も砲弾と機関銃弾が雨あられ。これでもなんとか有刺鉄線に取り付き、そこを突破してからさらに機関銃座をつぶして前進しなければならないのだ。味方の砲撃が前進していても、機関銃座はしぶとく生きているので、こっち側の部隊は嵐のようになぎ倒される。当然のように突撃は頓挫。しかし話はここから。

突撃命令を出す師団長のミロー将軍がいい感じにイカれていて最高によい。自陣に砲撃命令を出したり、突撃失敗後に見せしめだ!と軍法会議を開かせたりとやりほうだい。軍法会議で憤然、見せしめに選抜された3人の兵の弁護人につくダックス大佐はいいとこ取りの役だが、やはりカッコいい。そして一枚上手なのが、そもそも師団長に敵陣奪取を命じていて、軍法会議でもミローをかばっている軍団長のブルラール将軍。ミローの自陣砲撃命令を聞いて愕然とするが、この後が見せ場。結局軍法会議はどうなるのか、3人の死刑はどうなるのか、話は非常に盛り上がる。

客の期待する救済は容赦なく吹っ飛ばしておはなしは進行。ミローの末路もあまり爽快感を感じさせないところがよい。酒場で歌を歌わされるドイツ娘の表情も最後に効いている。やはりキューブリックは天才。カーク・ダグラスは、次作「スパルタカス」より、こちらのほうが断然イイ。