バーダー・マインホフ 理想の果てに

「バーダー・マインホフ 理想の果てに」マルティナ・ゲデックモーリッツ・ブライブトロイブルーノ・ガンツほか出演、ウリ・エデル監督、ドイツ、フランス、チェコ、2008


西ドイツ赤軍派=バーダー・マインホフ・グループの実録モノ映画。

リーダーの片割れ、マインホフが反シャーのデモで、警官が学生を射殺するのをみてショックを受けるところからはじまり、ベトナム戦争での反米運動、反イスラエル=親パレスチナ運動、反帝国主義毛沢東主義などなど、背景はいろいろあるのだが、それらはあくまで描写の小道具のひとつ。

とにかく西独赤軍派事件をひたすら実録路線で描写して行きましょうという映画なので、事件の展開がテンポよく進む。マインホフは多少は頭が働くが、バーダーは狂犬。この対比はおもしろいが、このグループの一人一人をみっちり描くことはこの映画の目的ではないようで、そこはさらっと流されている。

圧倒的におもしろいのは、とにかくテロ攻撃が派手。日本の極左組織なんかぜんぜん甘いわ。在独米軍の基地だろうと、裁判所、警察だろうとおかまいなしに爆弾で吹っ飛ばす。被害者は血まみれでバタバタ倒れる。もう最初の方の強盗なんか、かわいいものになってきて、終わりの方で出てくる銀行家の射殺や、シュライヤー誘拐事件あたりになると、とにかく容赦なくやりまくれ!という映像になってくる。シュライヤーの護衛が射殺されるところの描写も血みどろでよい。

裁判官(雰囲気的には、ちょっとナチ時代を思わせる)との法廷闘争、獄中生活などもけっこう見せ場になっていて、2時間半ある長尺物にしてはあまり退屈しない。マインホフやバーダーら、主要メンバーがバタバタ獄中自殺し、ハイジャック作戦が失敗して誘拐されたシュライヤーも射殺される陰惨な場面が淡々と描かれている最後もよし。

似た題材を扱っている若松孝二の映画がひたすら眠かったのとは大違い。キチガイの内面などどうでもいいわけで、サクッと見せてくれるのが親切というものでしょう。