高き彼物

「高き彼物」

     作/演出:マキノノゾミ

     出演:石丸 謙二郎、田中美里品川徹、金沢映子、酒井高陽、細見大輔、藤村直樹


     アステールプラザ中ホール、2012.7.27


マキノノゾミの舞台ははじめて見たが、これはおもしろかった。パンフレットにあるあらすじを抜書きすると、

昭和53年の春、受験生の藤井秀一( 藤村直樹 )は二人乗りしていたバイクで転倒し、その事故で同乗していた友人を失ってしまう。夏休みの始まったある日、彼は事故の時の恩人である猪原正義(石丸謙二郎)の家を訪れる。元高校教師だったという正義は、彼に勉強の仕方を教え、友人の死を共に悼み、励まし続けた。秀一は、正義を理想の教師のように思い、ぐんぐん傾倒してゆく。だが一週間が過ぎた日、秀一は思いもよらなかった正義の真の姿を知ることとなるのだった……。

というような話。本当におもしろくなるのは、この「正義の真の姿」が明らかになる後半部分で、ここは非常に見せる場面。石丸謙二郎は上手な人だから、驚かないが、とつとつとした語りだけで深刻な話に引き込んでいく手口はさすが。やはりエライ劇作家の作品はあなどれない。

知らない役者もいるが、みなうまい。受験生役の藤村直樹という人は、20歳くらいか。若くて、まっすぐで、かつ微妙に性的魅力があるといういい役者。調べてみたら、「平清盛」で、為義の子供として斬られちゃった役をしていたのね。

アステールプラザの中ホールは700人くらい?の、ちょうど演劇向きのホール。9列目を取れたので、役者の顔はよく見えた。9割の席は埋まっていたが、この公演、チケットが3000円しかしないのだ。マキノノゾミ自身が演出をしていること、そしてキャストの顔ぶれをみると、これで3000円は破格に安いと思う。にもかかわらず当日券が出ており、客席にも少し空きがあった。まあ田舎での公演はこんなものかなあ。

140分くらいある芝居だったが、長さを感じさせなかった。これはテレビで録画を見てもつまらないので、劇場で見られてほんとうによかった。