京都極楽銭湯読本

林宏樹『京都極楽銭湯読本』、淡交社、2011

京都の銭湯について、お店そのものではなく(それについては、著者の前著『京都極楽銭湯案内』で紹介)、建築、タイル、脱衣カゴ、タイル絵、ローカルドリンク、体重計その他、銭湯にかかわるアイテムを中心に紹介する本。

著者はウェブサイト「お風呂屋さん的京都案内」の管理人なので、とにかく銭湯のいろんなことにくわしい。京都は脱衣カゴに籐製のものや柳行李を使うところがあるのは、知っている人は知っているが、これを作れる業者はもう近くにはなく、新しく注文すると5万円か6万円はかかるらしい。なので、古い脱衣カゴを使いたい人は、廃業する銭湯に行ってもらってくるしかない。そこまでするものか。たしかに、他の地域では脱衣カゴはないか、あったとしても、脱衣ロッカーとは別に使うので、京都のような使い方をするのはめずらしい。

巻末の一章は、銭湯関係のデータとその解説にあてられていて、ここは勉強になった。最盛時は昭和30年代末で、その後は少しずつ減り続け、京都府内で590軒あった銭湯が、平成20年には210軒。これでも広島に比べればかなり数は多い。広島はもはや40軒あまりだろう。銭湯が100軒以上ある都市は、東京23区、大阪市、札幌市、横浜市名古屋市、神戸市の7つしかないとのこと。

銭湯の数は基本的には家庭用風呂の普及と逆相関。これは当然ですね。また廃業を決めるポイントは消耗品である釜の更新時にあるということで、耐用年数は約10年。釜を換えても経営者の年齢を考えて割が合わないと判断されれば廃業するようだ。ちなみに京都の銭湯経営者の約4分の3が60歳以上、利用者では40歳以上がやはり4分の3。これでは毎年バタバタ潰れていくのも当然か。広島の場合は明らかにはやっていないから潰れているのだが、京都だと客が入っていても、店主が高齢になって後継者がいないので廃業ということがけっこうあるのだ。

昭和39年の銭湯の名簿が巻末に出ていて、昔はこんなにあったのかと驚く。自分が銭湯好きなら、子供の頃からもうちょっと行っていたのに、これはほんとうに残念。