原発と日本はこうなる

河野太郎原発と日本はこうなる』、講談社、2011

衆議院議員河野太郎による、原子力発電とエネルギー問題についての本。自民党の中で核燃サイクル計画反対を一人で言い続けてきた人の本だけあって、非常によくまとまっている。

中でも出色なのは、電力会社、経産省、政治家のトライアングル=原子力ムラが、どのようにして都合の悪い情報を隠し、自分たちの利権を守ってきたかについてのくだり。ここは内部にいた人にしかわからない情報が満載で、読み応えがある。たしかにこういう情報を見ると、原発再稼働について政府や電力会社の言ってることは最初から疑ってかからないとダメということがわかる。

さらに問題なのは、使用済み核燃料の中間貯蔵問題。最終処分場が決まっていないだけでなく、当面の中間貯蔵スペースが足りない。現状では、7年から8年くらいで貯蔵スペースは足りなくなるという話。高速増殖炉計画はほとんど見込みがなくなっているものを、撤退の政治的コストが高いという理由で延命させているだけ。もはやどうにもならない。

ただ、河野太郎が「救国のエネルギー政策」という、再生可能エネルギーを中心にした今後のエネルギー政策についての部分には疑問がたくさんある。家庭部門の省エネはできても、産業部門はそんなに絞れるのか?基本的に経済活動とエネルギー消費量は比例しているから、産業部門の電力消費はそんなにできないのではないかという疑問が出る。また、再生可能エネルギーはやろうとすれば増やせるとはいえ、この本でなされているコスト計算は妥当なのだろうか。風力発電ひとつとっても、立地場所付近での補償はどうなるのか、地熱発電では環境保護を旗にして反対される場合の時間その他のコストはどうなるのか。

現実には原発を段階的にやめるとなると、代わりの燃料代を考えなければならないが、その計算はどのような数字を見込んでいるのか。はっきり言って、この本の内容だけでは「この先どうするのか」についての疑問が晴れたとは言えない。

とはいえ、原発新設計画はほとんど潰れたのも同然で、耐用年数が来てしまった原子炉を更新することもかなりむずかしくなっているので、現実的な代替案を考えなければならないことは事実。読まれるべき本であることは確か。