野獣死すべし (1959)

野獣死すべし」、仲代達矢、小泉博、東野英治郎ほか出演、須川栄三監督、東宝、1959

松田優作版しか見ておらず、これは初見。しかし同じ原作とは信じられないくらい全然違う…。松田優作版も面白かったが、こちらも非常におもしろい。自分としてはこちらの方が好き。

仲代達矢は頭脳明晰の大学院生。しかも修士課程だ。金はないようなことを言っているが、射撃だのボクシングだのいろいろやっていて、大学院にも通っているような奴が金がないわけないだろう。この仲代達矢が、地も涙もなく、じゃんじゃん人を殺しまくるお話。まあ涼しい顔で師匠の教授を含めて、いったい何人殺しているのか。最初の警官殺しに始まって、ヤクザ3人、教授やら事務員やら数人(これは爆弾)、警官をさらに6人ほど。爆破と警官殺しの相棒、10人以上殺している。自分のやっていることのヒントはペラペラよくしゃべるくせに証拠はまったく残さない。

警察は、若い刑事の小泉博とベテランの東野英治郎。犯人が仲代だというアタリはつけているのだが、証拠がさっぱりでてこないのでどうしようもない。終わりの方で仲代が関係のあった女の団令子の部屋にいたところに踏み込もうとするが、「令状は?ぼくの部屋の捜索令状は持っていても、ここのはないでしょう。さっさと帰ってください」と追っ払われる。最後も、アメリカに悠々と留学する(飛行機なので、金があるのだ)仲代を歯噛みして見守るありさま。しかし、東野英治郎は団令子を追えば必ず何か出てくるとブツブツ言っているので、これは完全に続編をつくるのが前提だったのだろう。結局、続編は1974年の藤岡弘、の版まで作られなかったのだが、仲代主演で続編ができていたらいったいどうなっていたのか、もったいないと思う。

仲代の恩師役の中村伸郎がこれまたハマっている。後のフジテレビ、田宮二郎版「白い巨塔」の東教授にそっくりだ。プロデユーサーはきっとこの映画を見ていただろう。ヤクザの佐藤允とか、ほかの脇役もいい味出しまくっている。演出のテンポも軽快で見ていてたのしい。この映画を見る前に「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」を見ようとして、あまりにつまらないので挫折していただけに、おもしろいものを見られてよかった。