追跡!真相ファイル 低線量被ばく 揺らぐ国際基準

「追跡!真相ファイル」 「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」、NHK、2011.12.28

NHKで28日にやっていた番組。低線量被曝についての取材番組。ICRPの基準で「生涯で100ミリシーベルト以下ならほとんど影響なし」となっていることに疑問を提起するもの。

いちおうICRPの関係者にも取材してインタビューを撮っている。取材に室井佑月(こいつは大嫌い)が入っているのがうっとうしいが、この人は自分でも放射線量測定をやっているそうなので、まあしょうがないか。

まずスウェーデンでガンが増えているという話。原因はチェルノブイリ原発事故。ここの被曝量は0.2ミリシーベルトなので、問題ないレベルのはずだが、トナカイの肉が問題らしい。トナカイの肉の放射線量は年間300ミリシーベルト(日本は500ミリシーベルト)。スウェーデンの医者は、ガン増加の原因は100万人調査して、がん発症者の被曝量は10ミリシーベルト以下だったと言っている。

次にアメリカ。イリノイ州原発集中地で、トリチウムが近くの川に排出されているが、米政府は基準値以下であり問題ないと言っている。ここもがん発症者が増えているが、原因は地下水らしい。州政府のデータでは1200万人の中で原発周辺地域の住民だけ、脳腫瘍、白血病の罹病率が30%増加、小児がんは100%増加。連邦政府は井戸水の汚染は1ミリシーベルト以下であり問題なしとして申立を却下。

ICRP基準では100ミリシーベルトでがん死亡リスクは0.5%増加ということになっているが、これが本当なのかという話。10月にアメリカで開かれたICRPの会議でインタビューを取っている。また会議の一部だけ録音を許可されているので、それも流れている。

ICRPの内部でも低線量被曝リスクを見なおせという声が出ている。カナダのICRP本部で科学事務局長に聞くと、すでに見直し作業は進行中であるとのこと。これまでICRPは低線量被曝リスクは低いとみなして、半分として計算している。元の基準は広島、長崎の被爆者データで計算してきたが、計算データが修正されても、低線量被曝リスクを引き上げていないという話。

この経緯について、当時の委員にインタビューを取ってみると、委員の多くはエネルギー省、原子力関連産業の関係者。核関連産業への配慮のために基準の引き上げをしなかったと言っている。低線量被曝リスクを上げると対策に莫大な費用がかかるので、基準引き上げに強く反対したと言っている。また核関連産業の労働者に対しては許容リスクを引き下げたが、「特に科学的根拠はなかった」と言っている。がんに罹患した労働者は現在訴訟中。ICRPの予算は各国の主要国の原子力所管官庁からの資金提供で成り立っているので、その政策判断が反映しているとのこと。