揮発性の女

「揮発性の女」、石井苗子澤田俊輔ほか出演、熊切和嘉監督、ラブコレクション製作委員会、2004

これは、2004年に「ラブコレクション」というタイトルで6人の監督が制作した低予算映画の中の一本。ほかは、タナダユキ月とチェリー」、廣木隆一「ガールフレンド」、安藤尋「ココロとカラダ」、原正弘「OLDK オーエルディーケー」、富岡忠文「ねじりん棒」。前の2本は見た。けっこう佳作。で、この映画もなかなかよい。

石井苗子は夫の死後、一人で田舎のガソリンスタンドを回している中年の女。ウーパールーパーを飼っていて、その餌を自分で網を抱えて取りに行っては、周囲から気持ち悪がられている。そこへ原チャリでやってきたのが澤田俊輔。ガソリンを入れさせた後、包丁を持ち出してわずかな金を奪って逃げていく。ところが、どうも逃げられないということになったらしく、澤田はまた戻ってくる。テレビのニュースで澤田が銀行強盗だとバレ、石井苗子は縛られてしまうが、自分で包丁を使って縄を切り、逆に包丁で逆襲して澤田は小ケガ。

大げさに騒ぐ澤田の傷の手当てをしてやってから追い出すのだが、行き場がない澤田はまた戻ってくる。結局澤田を家においてやるのだが、そのうち石井と澤田は男女関係になってしまう。これも石井苗子の方から誘うのだ。近所のバカねえちゃんと澤田が仲良くしているのをみて、石井が嫉妬したり、いろいろあるのだが、澤田の正体がバカねえちゃんにバレ、石井の肉体的要求に応じるのも限界になってきた澤田は石井の家を出ると言い出す。しかし今更澤田から離れられない石井はガソリンをかけて澤田に火をつけたりしてもうめちゃくちゃ。

騒ぎのあげく澤田は家に残るのだが、石井がある日戻ってきたら、警官が澤田を捕まえて連れて行こうとしていた。バカねえちゃんが警察に通報したのだ。石井は、バカねえちゃんと警官に石を投げつけたあげく、澤田を原チャリにのせて、みんながあっけに取られる中を逃げていく・・・。

石井苗子は、さえない中年の未亡人という設定だが、非常にキレイ。女として十分現役である。1954年生まれの人だからこの映画の製作時点で50歳だが、とてもそうは見えない。なので、石井から迫られた澤田は最初は性欲で食いついてしまうのだが、いくら石井が美人だといったって、ずっと食いつかれているとだんだんウザくなってくるのである。途中で石井がひとり泣く場面があるが、この場面は石井の寂しい生活が十分に表現されていて、なんともエロ哀しい。

まぬけな強盗役の澤田俊輔もなかなかうまく演じている。最後のトホホな逃走劇もチープな感じでグッド。熊切和嘉の映画にはハズレがないわ。