透明人間現わる

「透明人間現わる」、月形竜之介、喜多川千鶴ほか出演、安達伸生監督、大映、1949

むかしむかしの透明人間もの。といっても、ウェルズの小説とジェームズ・ホエールの1933年の映画の翻案。

月形竜之介の博士は弟子に人間を透明化する薬をつくらせようとするが、じつはすでに自分で薬を作ってしまっていた。ところが、その薬を飲んで透明になっても元に戻す薬ができておらず、しかも飲んでしまうと性格が凶暴になる副作用が。それで博士は発明を隠していたのだが、発明の内容を製薬会社の社長にしゃべってしまったおかげで監禁される。その上、社長は薬を博士の助手に飲ませて宝石泥棒をたくらむのだが・・・、というようなおはなし。

せっかく透明になれる薬を発明したにしては、透明人間の使い方がまちがってる。わざわざ服をきたまま顔だけ透明人間になって盗みを働こうとしたり、せっかくの透明人間の利点を生かせないで失敗するばかり。まぬけだなあ。

結局、透明人間はどんどん凶暴になっていって、自分を罠にはめた社長を射殺。自分も追い詰められて湖に沈んでしまう。「科学は人間によって善にも悪にもなるのです」みたいなメッセージが出てきておわり。うーん、どうにもしまらない。

円谷英二が特撮部分を担当しているので、「透明人間を見せる」ところはいろいろ工夫しているのはわかる。足跡だけぺたぺた歩いていったり、人のいないバイクが走ったり、空中にタバコが浮いて煙があがっていたりとか。しかし、基本的にストーリーがまぬけだし、技術的に卓越しているわけでもないので、透明人間の存在自体がちゃちなものにしか見えないのはざんねん。水の江滝子が透明人間の妹役で出てきて後半活躍するが、これはなかなかかっこいい。見るところといえばそのくらいか。