名誉と栄光のためでなく

「名誉と栄光のためでなく」、アンソニー・クインアラン・ドロンほか出演、マーク・ロブソン監督、アメリカ、1966

アルジェリア戦争の映画。最初は、インドシナ戦争の場面から始まるが、結局負け戦。農民出身の軍人、アンソニー・クインは故郷に戻るが、密輸しかすることがない。貴族の未亡人に取り入ってなんとかまた軍務に復帰させてもらうのだが、今度はゲリラ狩りが任務の空挺連隊長。

アンソニー・クインは、食えない男で指揮官としては優秀、部下の使い方もうまく、目的のためには手段をえらばない人間。この目的とは当然戦功をあげて将官になること。一方、副官の大尉、アラン・ドロンはインテリで理想家、アンソニー・クインからは好かれないタイプだが、軍人としては優秀で重宝されている。

この二人がアルジェリアの過酷なゲリラ戦でからんでいくのがお話の本筋。アラン・ドロンは下手をすれば抗命罪で軍法会議ものだと思うが、アンソニー・クインは気にせず使っている。一方アラン・ドロンは、クラウディア・カルディナーレとデキてしまうが、この女が敵の指揮官の妹で、フランス軍の情報を敵に流していた。アラン・ドロンは、兄の命を助けるという条件で居所を聞き出し、フランス軍はゲリラ討伐に出動するのだが・・・という話。

最後は、アラン・ドロンは軍隊に嫌気がさして退役。背広姿で去るその後ろでは、アンソニー・クインは将軍に進級して叙勲されている。一方街では、独立派の抵抗が相変わらず続いていたのでした、というオチ。

戦闘シーンは、いまいちリアリティに欠けていて、こんな戦闘だったらフランス軍はあっというまに全滅しているだろうとおもう(重機と迫撃砲で守っている山間の陣地に、ジープとトラックの車列だけでのこのこ登っていくというもの)が、その辺はまあご愛敬。敵味方の区別がつかず、どんどんテロ攻撃を仕掛けられるが、こっちも非戦闘員殺しまくり、法律無視というゲリラ戦のえぐい部分が強調されていて、そこはツボ。理想主義者のドロンも、残虐行為と無縁ではいられない。

クインは昇進、ドロンは退役という対照的な結末だが、見る側はアルジェリアの戦争は終わりではなく、結局フランス軍は負けてしまうことは知っているので、最後は皮肉がきいている。というか、これは明らかにベトナムで戦っているアメリカの姿が投影されているだろう。いろんな意味でけっこうたのしめた。