将軍たちの夜

「将軍たちの夜」、ピーター・オトゥールオマー・シャリフほか出演、アナトール・リトヴァク監督、アメリカ、1966

非常に懐かしい映画を「シネフィル・イマジカ」でやっていたので、見た。これは子供の頃、母親に連れて行ってもらった上映会で(ロードショーではなく)見たもの。わたしが戦争映画好きなので連れて行ってもらったのだ。実際に見てみるといわゆる「戦争映画」ではなかったのだが、わたし自身はかなり満足した。子供でもおもしろかったのだ。兵器や軍服がばしばし出てくるところも、子供ながらドイツ軍ファンだった心にはかなり響いた。

おはなしは、1942年のワルシャワから。娼婦の猟奇殺人が起こり、目撃者は現場から立ち去る、ズボンに赤い筋の入った軍服を見たという。情報部のグラウ少佐(オマー・シャリフ)は、それが将軍であることから、当夜ワルシャワにいた三人の将軍を調べ始める。駐留軍司令官のガプラー、その参謀長カーレンベルク、そしてヒトラーの特命で掃討作戦のためにやってきたタンツ。この三人にはそれぞれ怪しいところがあるが、少佐が将軍の犯罪を調べようとしても、当然調査は進まず、そのうちグラウは飛ばされてしまう。

そして1944年のパリ。グラウは中佐に昇進していたが、また三人の将軍がパリに集まっていた。そして娼婦の猟奇殺人。しかし今度はタンツの運転手だったハートマン伍長が現場を目撃。タンツはハートマンに罪を着せて脱走させてしまう。グラウは今度こそタンツが真犯人だと知って逮捕に行くが、時はちょうどヒトラー暗殺事件の真っ最中。反乱軍にさきがけてタンツを逮捕しようとしたグラウは、ヒトラー生存のニュースで立場が逆転、タンツに射殺され、事件は闇に葬られる。

今度は1965年のハンブルク。またまた娼婦の猟奇殺人が。殺されたグラウの代わりにタンツを追及するのは、フランスのレジスタンスでありながら、グラウの友人だったインターポールのノワレ警部。タンツは、戦犯として服役していたが出所して、師団の戦友会に出席しようとしていた。そこにノワレ警部が現れて・・・。

ピーター・オトゥールオマー・シャリフは、「アラビアのロレンス」コンビだが、今度は敵同士。ピーター・オトゥールの異常な人格と、オマー・シャリフの執念の対比がおもしろい。ほかのキャスト、特にカーレンベルグ将軍のドナルド・プレザンスが一筋縄ではいかない(こっちはヒトラー暗殺者の側で、タンツを逮捕しようと企んでいる)渋い味を出しまくり。こっちは「パワープレイ」でコンビを組んでいたなあ。

軍服が話のカギで、タンツも陸軍から武装親衛隊に転属したりしているので、そのあたりの考証はちょっとおかしい(タンツ個人が転属するのはともかく、陸軍が部隊ごと武装親衛隊に組み入れられることなんかあるのか?タンツが1942年から44年まで師団長なのも変)。戦車とハーフトラックはパチモノだが、タンツが指揮するワルシャワ市街の掃討作戦ではかなり派手に街を焼き払っている。キューベルワーゲンがたくさん出てきていて、これもよかった。ドイツ軍内部のややこしい関係、複雑なストーリーときちんと張られた伏線等々、おはなしは退屈するところがない。2時間半、楽しく見られた。これは原作本の訳が改訳されて去年出版されているそうなので、そっちもぜひぜひ読まなければ。