醜聞

「醜聞」、三船敏郎山口淑子志村喬ほか出演、黒澤明監督、松竹、1950

有名人のスキャンダルをひたすら探すマスコミと弁護士のお話。基本的に法廷劇。

三船敏郎が画家。山口淑子が歌手。この二人がたまたま部屋にいたところを写真に撮られてしまい、その写真が小沢栄が編集長をしているスキャンダル雑誌に載る。三船敏郎は怒って訴訟を起こすが、そこに代理人として名乗り出たのが弁護士の志村喬。しかし、志村喬は金に詰まっていて、敵側の小沢栄にかんたんに買収されてしまうのでした・・・。

というわけで志村喬は訴訟進行ではまったく役に立たず、相手の弁護士にやられっぱなし。もう進退窮まったかというところで、志村喬が強烈な一発をかましてくる。

善悪のはっきりした話で、三船と山口が志村喬の病気の娘のためにクリスマスの会をする場面などは、いいかげんにしろと言いたくなってくる。しかしこういう演出も、金のため(と同時に病気の娘のためでもあるが)に正義を裏切る志村喬と、その最後の変身を際だたせるための道具立て。

よって、この映画のおいしいところは、三船と山口のさわやかカップル(カップルじゃないけど)ではなくて、志村喬が全部持って行っている。ダメダメ人間の志村喬が最後に立ち直るパターンは、「生きる」と同じだが、こっちの方が志村喬が情けない分、最後のどんでん返しがより引き立っているような気がする。やっぱり志村喬いいわ。こういう役も「七人の侍」の勘兵衛も、ゴジラ映画の博士もやっているのだから、おいしいところを総取りである。名優とはこういうもんですか。