ドヤ街の街の縁

「ドキュメント20min.」、「ドヤ街の街の縁」、NHK、2011.5.22

昨日、日曜日にNHKで放送していた短いドキュメンタリー。大阪、釜ヶ崎がネタというのを知って、これは見逃せないと見てみた。

最初に出てくるのは「六さん」という59歳の男性。釜ヶ崎で花を売っているのだという。このバイト、リヤカーに花の鉢植えを摘んで売り歩くというもの。売り上げの4割が手に入るが、売り上げは多い日でも4000円でそんなに実入りのいい仕事ではないそうだ。

それでも日雇いの建設工事と違って、客との接触がある分、やりがいはあると言っている。最初の場面で、知り合いの自殺者が最近3人いて、2人は階段から飛び降りたとのこと。

もうひとり、78歳の男性が出てきた。釜ヶ崎に住み着いて50年以上だそうだ。1970年頃の街の様子が流れているが、日雇い人夫を運ぶバスがたくさん並んでいて、街に活気があったことがうかがえる。今は老人用のアパートで生活保護で暮らしているが、知り合いはみな死んでしまい、音信不通の妹と連絡をとりたくて、本籍地の役場に手紙を出し続けているという話。

問い合わせにはやっと役場から返事が来て、妹は北海道から神奈川県に移り住んで今も生きていると知らせてきた。いまはその交通費を工面しているところ。

次に出てくるのは60歳の男性。この人はまだ日雇い仕事を現役で続けている。自分で作った歌を口ずさんでいるが、それは亡妻の思い出を歌ったもの。釜ヶ崎に学生ボランティアで来ていた女性と結婚して子供もつくったが、28歳の年で病気で亡くしてしまった。その後酒に溺れて子供とはほとんど音信不通。歌は再出発したいと思って歌っている。

小さいバーのような飲み屋でのライブ。亡妻の写真を持ち込んでつるしている。開始直前になって息子がやってきた。歌はぜんぜん下手だが、もはや上手下手のレベルではない、この人の人生の叫びみたいなもの。息子は「正直恥ずかしいが、楽しそうにしていてよかった」と言っている。

街の様子は、ドヤの看板がたくさんあること以外はそんなに変わったところはなさそうだ。しかしテレビカメラが入れるところは限られているだろうから、これだけでは実際の街の様子はよくわからない。

短いが、インパクトのある番組。ここに出てきた人たちは、住むところがあるだけまだましな生活を送っているのだろう。