氷点(1966大映版)

「氷点」、安田道代、若尾文子船越英二ほか出演、山本薩夫監督、大映、1966

「氷点」の大映1966年公開の映画版。白黒。主なキャストは、

辻口啓造:船越英二
  夏枝:若尾文子
  陽子:安田道代
  徹: 山本圭
藤尾辰子:森光子
村井靖夫:成田三樹夫
高木雄二郎:鈴木瑞穂
北原邦雄:津川雅彦

というメンバー。なかなかぜいたくな顔ぶれだが、当たりなのはやはり安田道代。この明るいけなげさを出せているのは、安田道代だからこそだろう。母、夏枝役の若尾文子はほんとうに邪悪な奴だなー。この時点でけっこうな年に見えるのはやはり大女優の貫禄というものか。

父、啓造の船越英二は、紳士っぽくて実際には冷酷なイメージがよく出ている。兄、徹のうつうつっぷりといい、原作のキャラクターが忠実にキャスティングされているのはエライ。徹の友人で、陽子のボーイフレンド、北原が津川雅彦だが、これはくせのある役を多く振られる今のイメージとはだいぶ違う。しかし北原のまっすぐなところはよく演じられている。若いときの津川雅彦はこういうさわやかキャラだったのね。

おはなしは、「氷点」だけで、「続・氷点」の部分は含まれていない。なので、陽子が自殺を図り、ほんとうの出自がわかって甦生したところでおしまい。たしか「氷点」では、甦生したかどうかには触れていなかったはずで、中途半端な印象は免れない。結局生き返ったことがわかってしまっているのでは、自殺で話を終わらせた意味がないなあ。脚色は水木洋子なのだが、小説が大人気になった後だから、生死不明のままで話を終わらせるわけにはいかなかったのかもしれない。

最後の点を除けば、かなり原作に忠実にストーリーを作っている。前半部分は大部省略もあるので、原作ファンにとってはちょっとものたりない気もするが、安田道代の清楚な姿を見られただけでまあいいかと思う。