現代やくざ 人斬り与太

「現代やくざ 人斬り与太」、菅原文太渚まゆみ安藤昇ほか出演、深作欣二監督、東映、1972

仁義なき戦い」シリーズの先行作といわれるこの映画、初めて見たがこれはおもしろい。

チンピラ仲間の頭目が、菅原文太。これが最初から最後まで狂犬のように暴れている。「仁義なき戦い」で菅原が演じた広能よりは、むしろ「仁義なき戦い 広島死闘編」での北大路欣也に近いような役柄。しかし、殺人マシーンの北大路欣也よりも、こちらの菅原文太のほうがさらに狂っている。北大路欣也は親分には忠実なのだが、こちらの菅原文太は人の下につくことができない、一匹狼の狂犬。「広島死闘編」での千葉真一に通じるところもあると思う。

この菅原文太が暴れ回るのが、川崎、とくに堀之内のトルコ街。この撮影当時ですら見るからに汚い、くすんだ印象の町で、「トルコ」の看板が林立。川崎は海岸方面の工業地帯もいいが、堀之内やら、ここから近い競馬場やら競輪場やら、昭和の残り香が強く残った町だ。

共演者も豪華で、菅原文太の愚連隊を囲い込むやくざの組長が安藤昇。これが非常に渋い。まあもともと本物だから当然だが、計算もできて器も大きい、やくざ組織の頭に立てる人物を好演。ほかにも、小池朝雄、内田朝雄、待田京介室田日出男三谷昇らと、渋すぎる。特に菅原文太のムショ仲間だった三谷昇の存在感は特別。

女(渚まゆみ)が犬のように殺されたのを見て、やくざに飛びかかり、自分も犬のように殺されてしまう菅原文太の最後があっけなくていい。菅原文太が死ぬのを見つめている安藤昇と並んで絵になる場面。いいわー。