博奕打ち 総長賭博

「博奕打ち 総長賭博」、鶴田浩二若山富三郎ほか出演、山下耕作監督、東映、1968

ヤクザ映画の傑作、ということになっている本作だが、まあふつうにおもしろかったという感じ。

天竜一家の親分が病気で倒れ、跡目に鶴田浩二が推されるが鶴田は兄弟分の若山をはばかって辞退。結局跡目は、叔父貴分の金子信雄ほかがよってたかって名和宏をつけてしまう。出所してきた若山はそれに納得できず、名和宏にけんかをふっかけて結局内輪喧嘩になる。襲名披露の花会の分け前をめぐって、名和宏は本当の黒幕が金子信雄だったことを知るのだがすでに遅し。名和宏金子信雄の刺客にやられてしまい、鶴田浩二は責任を取ると称して、自分で若山を刺し、返す刀で金子信雄も刺し殺すというような話。

最初、名和宏がどっち側かがよくわからないように作ってあるので誰が悪役かがはっきりわからないようになっているのだが、見ているうちにそんなことはどうでもよくなり、とにかく鶴田浩二がばしばし人を殺しまくるのが気持ちよくなってくる。

自分的にはそんなにいいかなあと思うのだが、おそらくそれは「仁義なき戦い」以後のヤクザ映画を見てしまっていて、かつそれ以前のヤクザ映画をそれほど見ていないということなのだろう。これも笠原和夫脚本なので、本作がヤクザ映画の路線転換にとって重要だというような話は、コンテクストがわかっていないと意味がわかりづらいのである。

しかし、鶴田浩二若山富三郎は文句なくかっこいい。特に若山富三郎は光っていると思う。他の配役も、金子信雄名和宏ほか、曽我廼家明蝶藤純子三上真一郎等々、けっこう豪華。金子信雄の役柄は、仁義なき戦いシリーズとほとんど変わっていない。コミカルな台詞をしゃべらせなくても、見た目と役柄だけで、「山守」っぽく見えてしまうところが、金子信雄のエライところ。