無能の人

無能の人」、竹中直人風吹ジュンほか出演、竹中直人監督、ケイエスエス、松竹第一興行、1991

原作そっくりという話になっている、この映画、原作を読んでいないので、ほんとうにそうなのかどうかわからない。しかし、この竹中直人のダメダメな空気はなんともいえない雰囲気をかもしだしている。ほんとうに「無能の人」だ。

やることなすことすべて失敗だがそれも当然で、竹中直人を見ていると、何もうまくいくわけがないだろうと思えてくる。そんな竹中にもなぜか女がよってきて(このショボイ雰囲気もまたよい)、店をたたんでよそで一緒に暮らそうと言い出す。

結局、竹中は風吹ジュンと息子の手をとって三人でただ道を歩いていく。この夕方の場面が無言でこの話を物語る。めげてばかりの自分には心にしみる場面だ。ゴンチチの音楽がこれもひとつひとつの場面によくはまっている。こんな映画がバブル絶頂期につくられていたということがほとんど奇蹟のようだ。