バレンシア州立歌劇場 神々の黄昏

ワーグナー   楽劇「神々の黄昏」


   ランス・ライアン(ジークフリート
   ジェニファー・ウィルソン(ブリュンヒルデ
   マッティ・サルミネン(ハーゲン)


   ズービン・メータ指揮、バレンシア州立歌劇場管弦楽団


昨日に引き続き、バレンシア州立歌劇場の「神々の黄昏」を聴いた。これも4時間半あまり。全部集中して聴いていたとはいえないが、とにかく消耗した。しかしこの消耗感は非常にここちよい。この曲の21世紀の演奏として、いままで聴いた中で一番できのいい演奏だったと思う。

序幕、ノルンは仮面をかぶっている。ジークフリートブリュンヒルデの二重唱は、前の「ジークフリート」と同じ、野蛮人みたいな格好。この場面の歌はとくにすばらしい。最後の「ハイル」は天井まで突き抜けんばかりの声。

一幕、ギービヒ家の人々は、スーツにネクタイを締め、衣装には「¥」とか、「元」とか、いろいろ貼り付けてある。舞台後ろの映像はキンキラの檻みたいな感じ。この放送の後にやっていたメイキングも見たが、演出家が言っていたのは「株式市場だと思ってください」ということだった。グンターも、ハーゲンも、顔に文身が入っていて、これもカネ、カネ。みんな金の亡者ということになっている。グートルーネは、いろいろ飾りをつけた悪趣味なタレントみたいな格好。ジークフリートは現れたときは、序幕と同じ格好だが、舞台上で着替えさせ、これもすっかりビジネスマンに。ネクタイには「¥」のマーク。

二幕、ギービヒ家の家臣達もみなスーツで、平仄が揃っている。ここですばらしいのは、「ハイホー」の場面のハーゲン。ハーゲンは一貫してすばらしい。まあ大ベテランのサルミネンだから納得だが、こんなにいい歌手だとは思ってなかった。最後の三重唱のところも、グンター、ブリュンヒルデともガンガン声が鳴っていて、すごい迫力。

三幕、ハーゲンはあいかわらず凶悪に声が出ている。葬送行進曲の後はブリュンヒルデの自己犠牲。ブリュンヒルデが火をつけて、後ろの画面全部に火が付いた状態になって、ブリュンヒルデはこれまでの作品でも出てきた人力クレーンに乗り、クレーンごと舞台の奥に消えていく。舞台の奥には、天井から吊りで人が組体操みたいな格好で現れたと思ったら、ワルハラ城に火がかかった後、これがバラバラになってみんなで空中を泳いでいる。最後はみんな死体みたいにぶらさがっているが、あれはいったい何?ラインの娘たちは「ラインの黄金」と同じ、水槽に入って現れた。

スクリーンには文字がいろいろ出ているがわからない。最後は、スペイン語で「愛」と出てきて一巻の終わり。最後まで楽しめたよ。また時間が出来たときに、「ラインの黄金」から聴き直してみたいな。