南の島に雪が降る

南の島に雪が降る」、加東大介伴淳三郎有島一郎ほか出演、久松静児監督、東京映画、1961

これも日本映画専門チャンネルでかかっていた、加東大介特集の中の1本。といっても、「大番」シリーズとこれとあと1本しかないのである。東宝作品だけでも数え切れないほど出ているはずだが・・・。基本的には脇役の人だったから、これがベストセレクションということなのかもしれない。

この映画は、なにしろ加東大介本人が執筆した小説を元につくられているので、そういう意味で「本物」である。戦争末期のニューギニア戦線の話なので、それは悲惨な話だらけだったはずだが、映画では悲惨なところはあまり露骨には描かれず、むしろ全体として明るいトーンになっている。戦後の場面はなく、最後の公演を終えて、復員するところで終わり。

しかしさすがに本人が出ているだけでなく、喜劇俳優の大物達が顔を揃え(森繁、フランキー堺渥美清といったあたりも登場)、司令官は志村喬、参謀は三橋達也等々、この配役はそうそう揃えられるものではない。喜劇と紙一重のところをちゃんとやり切っているところはさすが。もちろん軍人らしさも板についており(加東大介は衛生兵)、すきがなくきちんと作られた映画。「瞼の母」のところはちょっと泣かせる。