大番 完結編

「大番 完結編」、加東大介淡島千景仲代達矢ほか出演、千葉泰樹監督、東宝、1958

「大番」シリーズ4部作の最終作。前作が太平洋戦争突入で終わったので、戦争中の苦労とかいろいろ描かれるのかと思ったら、案に相違していきなり戦争終わってる。東京証券取引所の再開は昭和24年だったのだそうだ。けっこう遅いので驚いた。

ギューちゃんは、以前の失敗で株屋の免許が取れないので、新どんが喫茶店をやっている2階で細々と株屋をはじめた。ぼろぼろの格好で訪ねてきたチャップリンさん(東野英治郎)のすすめでパルプ株を買って大当たり。大枚の金と東証の会員権を手にする。その後も、パルプ会社の社長と懇意になってゴルフをはじめ、それが縁で朝鮮戦争にあたってまた大儲け。

一方、あこがれの人、原節子はダンナは戦死、家も没落して悲哀を囲っている。ギューちゃんは、何くれとなく差し入れをするが、原節子はプライドが許さないらしくはっきり拒否。こういう場面の原節子は、美しさがさらに引き立っていてさすが。しかし、とうとう抵当に入った家屋敷が売りに出されるハメになり、ギューちゃんの援助でようやく家を買い戻してもらうことになる。ここでギューちゃんはついに原節子への求婚を決意するが、断られたあげくに原節子結核で病死。

さらに相場の方も戦争は終わり、さらにスターリン暴落で大損してしまう。原節子の死と相場の失敗ですっかり意気消沈し、会社にも出なくなったギューちゃんだが、新聞でチャップリンさんの死を知り、再び相場師として立つことを決意、最後の相場師として自ら場に立って取引を、というところでおしまい。

4作、見終えたが、これはけっこうおもしろい。まあほとんどギャンブラーの一生なのだが、加東大介のコロコロ太った憎めない風貌と人柄、それを支える世話女房の淡島千景と都会的でクールな仕事の相棒、仲代達矢の対比が非常にあざやか。脇役も、マドンナの原節子、自殺してしまう河津清三郎、ボロを着てはいるがかつての相場の世界を知るチャップリンさんこと東野英治郎ほか、キャラクターがはっきりしていて一人一人が引き立っている。

何より、ギューちゃんのジェットコースターのような浮き沈みの激しい人生が見るものをひきつける。脚本はよくできているが、やはり原作がおもしろいのだろうと思う。最後は相場師の時代が終わろうとするところで、あえて再びその道をえらぶギューちゃんがかっこいい。昔の取引所の姿や株取引に群がる人々の様子もおもしろく、見てよかったと心から思える。