大魔神

大魔神」、高田美和、青山良彦藤巻潤ほか出演、安田公義監督、大映、1966

これもひさしぶりに見た、といってもこの前見てから10年ちょっとくらいしかたっていない。まあ、何回見てもおもしろいので別にかまわないんですが。

ひさびさに見てみると、悪役、大館左馬之助=五味龍太郎とその手下ども、遠藤辰雄やら伊達三郎やらがいかにも憎々しい。よい悪役がいないとお話は盛り上がらないので、この不敵な悪人面は貴重品である。またやることなすこと、悪いことだらけ。巫女の婆もあっさり斬ってしまうし…。

肝心の大魔神、これが動き出すのが、映画が始まってから約1時間。それまでの間、話がだれないところもさすが。そして、大魔神の額に鏨が打ちつけられてから大魔神が歩きだすまでひと芝居あり、このタメが魔神が動き出す理由にちゃんと説得力を与えている。

大魔神が動き出してからは、時間的にはわずか20分あまりなのだが動きの細かさ、セットの緻密さ、文句のつけようがない。城の建物や門の瓦がバラバラとすべり落ちていく描写の細かさはさすが。左馬之助が鏨で胸を串刺しにされるところの印象は強烈だ。最初に見たのは子供の時だったはずだが、この場面はさすがに覚えているし。

さいごはちゃんとお姫様が存在感を示して、手がつけられなくなった魔神を静まらせる。高田美和を踏みつぶそうとして思いとどまる魔神の描写がただのモンスターではない、大魔神の性格をよくあらわしている。大魔神の魂が抜けた後、魔神像が崩れるところもいい。84分の短い映画だが、よくこれだけのテンションを維持できていると思う。