ベルク ヴォツェック 新国立劇場

ベルク   「ヴォツェック

   トーマス・ヨハネス・マイヤー、
   ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネンほか、

   ハルトムート・ヘンヒェン指揮、東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場合唱団

   新国立劇場、2009.11.26

去年の11月に新国立劇場で上演された「ヴォツェック」。今年の3月にNHKの「芸術劇場」で放送されていたものの録画をやっと見た。コワイもの見たさというか、コワくて見る気がしなかったのだが、HD録画したソースをハードディスクにおいておくのがじゃまになってきたので、さっさとDVDに落としてしまうことにした。で、ついでに見てしまった。

台本が陰惨、音楽が気色悪い、歌手はみんな狂った役ばっかり。1時間半あまり、見てるのがつらいわー。まあ一種のホラーだが、ある種のホラー映画のように笑える怖さではなくて、しゃれにならない、気持ち悪さがつきまとうような怖さ。ヴォツェック、情婦のマリー、鼓手長、その他、みんなおかしいよ。

演出のクリーゲンブルクは、舞台全体に水を張るというお金も手間もかかりそうな作りで、歌手はみんなびしょ濡れ。最後にヴォツェックがコロリと死ぬところでも、ヴォツェックの死体はぐしょぐしょである。その死体の上に子供がただひとり立ち、少年達の合唱がはいる。この場面は気持ち悪さの頂点で、夢に見そうな場面。この子供が(歌はないのだが)むちゃくちゃ存在感があって、すごい。中島健一郎という子だそうだが、末恐ろしいわ。

見ているときも見た後もさわやかな気分とか、カタルシスとかひとかけらもないが、強烈な記憶だけが頭に残る作品。生で見た人、特に初見の人はどんな気持ちだったのだろうか。生で見なくてよかったという思いと、その場にちょっと居合わせたかったという気持ちが少し。なんともいえない・・・。