三婆

「三婆」、三益愛子田中絹代木暮実千代出演、中村登監督、東宝、1974

原作は、テレビドラマ、舞台に繰り返し製作されている作品だが、そちらは一切見ておらず、この映画が初見。しかし非常におもしろい。

舞台は昭和38年。「社長」が死んでしまい、本妻の三益愛子、妹の田中絹代、妾の木暮実千代の三人が残される。三益愛子は当然自宅に住んでいるのだが、そこに社長の借金の形に自宅を売った田中絹代と、これから店をやるから、それまで少しの間おいてくれという木暮実千代が押しかけてくる。

それから「三婆」による欲丸出しのいがみあいが始まり、そこに社長の番頭格だった有島一郎と、三益愛子の家政婦をしている小鹿ミキがからんで、さらにお話はややこしいことに。三人の老女は、欲と感情だけでケンカしたり同盟したりと毎度騒動を起こすが、三益愛子がとうとうキレて、田中絹代を老人ホームに入れようと手続きをすませてしまう。ホームの職員が引き取りに来たときに田中絹代は狂乱。三益愛子は、「これからもずっと四人(+有島一郎)で暮らしていきましょう」と言うのであった。

それから十年。家を出て行った小鹿ミキが夫と子供を連れて家を訪ねてくる。家は荒れ果てているが、四人はまだ生きていた。しかし半分ボケている。小鹿ミキは立ち去りがたい気持ちを抑えて帰って行く、という話。

三益、田中、木暮の大女優三人が、三婆を演じきっている。これは本当に上手い役者でないとおもしろくならない話で、しかも本当に老人で、枯れている女優でなければリアリティが出ないから、この三人が揃ったことがこの映画がいい理由だろう。舞台では池内淳子が当たり役にしているようだが、池内はともかく、他の二人を揃えるのはたいへんだと思う。

原作が書かれたのは1961年だが、これを喜劇にしたのがいまでもこの作品が生き残っている理由だろう。いま見ると喜劇と悲劇の境目にあるような話である。特に10年後の家の描写のところ。