陸軍諜報33

「陸軍諜報33」、千葉真一丹波哲郎緑魔子ほか出演、小林恒夫監督、東映、1968

大映陸軍中野学校」シリーズの東映によるパクリ映画。というか、ここまでパクるか?というくらい、「陸軍中野学校」をていねいにパクリまくっている。題名は陸軍中野学校の別名「33部隊」から。

千葉真一は、身に覚えのない罪を着せられて、犯罪者、脱走兵扱いをされ、同じような境遇のほかの軍人達と、いきなり中野学校に集められる。学校の教官で、この罠に一役買っているのが丹波哲郎。これね、「陸軍中野学校 密命」をパクるのはいいんですが、犯罪者扱いしていきなり行方不明にしたら、残された家族はは国賊の家族扱いで恩給ももらえないし、そんなむちゃくちゃが通るわけないでしょ。「陸軍中野学校」では、出世の道を捨て、スパイとして生きることを、生徒達がいかに受け入れていくかを丁寧に描いていたのに、その辺はこの映画ではまったく無視である。

卒業課題は、日本の国策についての機密情報をもらしているスパイ網の摘発。この辺も「密命」と「開戦前夜」のパクリ。敵の女スパイ役は緑魔子。こういう設定までパクリ。しかし緑魔子はきれいでエロい女優だが、大映での敵スパイ、小山明子村松英子のような「品」がないのだ・・・。

敵のスパイ組織(首領はドイツ人の通信員ということになっているのだが、最初にネタばらしをぜんぶやってしまっているので、謎解きのたのしみがない)を壊滅させた後、蘭印タラカン精油所が開戦直後に爆破されることになっているから、それを阻止しろという命令が。

精油所の爆破を阻止しろっていっても、部隊を派遣して精油所を抑えるのではなく、爆破装置を破壊してこいというもの。そんなの一旦、爆破装置を解除しても、気づかれればすぐに再爆破されるに決まっているんだから、意味がないんじゃないのか?

現地での日本人協力者に扮しているのが、池部良。敵の機関銃で蜂の巣になりながら、銃は撃ちまくるは、手榴弾で敵を全滅させるは、やってることもはちゃめちゃである。ちなみに敵のオランダ軍部隊の車列には「日産パトロール」がいる(笑)。

宣戦布告前に精油所に潜入して破壊工作をやろうというのだから、単なるテロリストで、即決で処刑されても文句はいえないところだが、やたら日本語の上手いオランダ軍将校はどSらしく、とにかく千葉ちゃんを拷問。日本側の攻撃が間近いことはわかったんだから、さっさと爆破すればいいのに。そのうち千葉ちゃんには逃げられ、爆破コントロールの機械がある建物は時限爆弾で破壊されてしまう。精油所の中でそんな爆発をおこしてだいじょうぶなのか?だいたいあの爆破の状況で、オランダ兵が全滅して千葉ちゃんが生きていることそのものが謎。海に飛び込んだ後、どこからともなくモーターボート(どう見ても現代のもの)を使って逃げてるし。だいたいどうやって手錠を外したのか?

信じられないような安易さで任務は終了。めでたしめでたし。この映画、脚本は高岩肇金子武郎で、戦争映画の経験はないが、こんなむちゃくちゃな話を書いて誰もチェックしなかったのだろうか。明らかに続編もありそうな終わらせ方の割に、結局これ一本で終わったところを見ると、評判はよくなかったのだろう。この出来ではあたりまえ。