飛竜伝2010-ラストプリンセス

「飛竜伝2010-ラストプリンセス」、黒木メイサ徳重聡、東幹久ほか出演、作・演出、つかこうへい、アステールプラザ大ホール、2020.2.24

つかこうへいの「飛竜伝」公演。1日限り、昼夜2公演で、夜の方に行ってきた。当日券だったのに、比較的いい席(8列目、上手だが中央に近い席)が残っていてラッキー。

何度も上演されている「飛竜伝」で、わたしがなじみ深いのは、1979年の新潮文庫版に載っている「初級革命講座 飛竜伝」である。しかし今度の版は、1997年集英社版の「飛竜伝 神林美智子の生涯」が底本のようだ。

神林美智子(沖縄出身-黒木メイサに合わせてある-の大金持ちの家の娘で東大生)が、全共闘のリーダー(東幹久)に「ヤラセロ!」と迫られて愛人にされてしまう。しかし神林の人望が上がるのとは逆にリーダーの権威は失墜、神林はついに全共闘40万人の委員長に。リーダーは失脚寸前の我が身を救うために、神林に機動隊の隊長(徳重聡)の愛人になって、11月26日、決戦の日の機動隊の配置予定図を奪い取れと迫る。機動隊の隊長と子供まで作る神林は、全共闘と機動隊の板挟みになって・・・というような話。

シンプルなセットに、からだを酷使するアクロバティックな演技、機関銃のような早口で長いセリフ、ダンス、歌がもりもりで、ストリップや歌謡ショーのノリも入れ込んである作り込まれた舞台は、いま見ても全然古さを感じさせない。30分の休憩をはさんで、二幕、2時間半の舞台だがだれているところはまったくない。

役者は、黒木メイサが男らしいわー。最初のダサダサの場面(メガネをかけている)から、委員長になってのしていくところ、ジャージ姿が非常に決まっている。わたしはこの人を、映画、テレビドラマ、舞台のいずれでも見たことがなく、CMだけで知っている人だったのだが、動きもセリフもすばらしく、圧倒的な存在感。さすがである。

徳重聡、東幹久もなかなかがんばっていたと思う。特に徳重聡の「中卒機動隊員」のコンプレックス丸出しのところはいい。しかしこの二人を含めて他の役者はみな黒木メイサの引き立て役である。それほど黒木が際だっている。

つかこうへいは、肺がんでふせっているということなので、これがつか演出の最後の作品になるかもしれないのだ(そうならないことを願うが)。この舞台を見られたのは、ラッキーという言葉では言い表せない。まさに「畢生の」作品。