電送人間

「電送人間」、鶴田浩二白川由美中丸忠雄ほか出演、福田純監督、東宝、1960

東宝「変身人間シリーズ」が今週、日本映画専門チャンネルで連続5本、かかっている。本来なら「透明人間」から見ているべきなのだが、時間の都合でこれを先に見ることに。

最初の場面はいまはなき多摩川園。わたしがはじめて東京に行ったときにはすでに遊園地はなくなっていた(二子多摩川園はまだあった)。いまは駅の名前も変わって、昔の面影はどこにもなくなってしまったが・・・。

おはなしは、戦時中に上官の悪事をとがめたために殺されたはずの須藤兵長中丸忠雄)が、仁木博士の作った物質電送機を使って、昔の上官一味を次々と殺していくというもの。殺される者たちはかならず銃剣で殺され、認識票を握らされている。これを追いかけるのが新聞記者の鶴田浩二やら、刑事の平田昭彦やらといった人たち。

この物体電送機、ある意味、半分どこでもドアなのだが、使い勝手の悪いことに、電送機のある場所から物質を別の電送機に送ることができるだけ。なので、電送機をあらかじめ行きたいところに仕掛けておかなければならない。極超低温でしか動作しないので、むちゃくちゃ電気を食うだろうし、だいいち電送機でかすぎ。作るのも運ぶのもただごとではないだろう。だいたい犯行現場に移動するときはいいのだが、逃げるときはふつうに足で逃げなければならないのである。しかしその割には、中丸忠雄、何人がかりで追跡されてもあっさり逃げている。どうもなっとくいかないなあ。

しかし中丸が電送されるとき、体中に走査線状の電気?が走る描写は、いかにも電送という感じで、なかなかいい。電送機の説明は非常に怪しいが・・・。ストーリーは、中丸忠雄の恨みというだけで、やや説得力に乏しく、関係ない人でもバンバン殺しているところもどうも納得いかない。まあ戦争の亡霊なんてそういうものか。中丸のちょっと幽鬼にも似た姿は、もう亡霊にしかなれなくなった戦争の記憶を思い出させてくれる。