レオン・フライシャー ピアノ・リサイタル

バッハ(ペトリ編) 「羊は安らかに草をはみ」
バッハ       「旅立つ最愛の兄に思いを寄せる奇想曲」
          「半音階的幻想曲とフーガ」
バッハ(ブラームス編)「シャコンヌ
シューベルト    「ピアノ・ソナタ 変ロ長調

 レオン・フライシャー(ピアノ)、NHK芸術劇場、2009.12.4


今週の「芸術劇場」はフライシャーのピアノ・リサイタル。今年の10月19日、武蔵野市民文化会館の来日公演の録画。いつものとおり、演奏の前に演奏者を紹介するコーナーがついている。

1928年生まれ、若くしてデビューし、キャリアを積んでいたが、30代で突然右手の指が動かなくなり、その後は左手での演奏、指揮、教育に力を注いだ。「ジストニア」というこの神経性の病気(脳の機能障害だという)の治療を続けた結果、40年のブランクを経て両手での演奏ができるようになり、録音や公演を行うようになった・・・という人。もう80歳を過ぎているが、あまり老いているようには見えない。自分の病気のこと、音楽のこと、音楽を学ぶ人々へのメッセージ、ひとつひとつが胸にしみいる言葉である。

演奏ははっきりいって、うまくはない。特にシューベルトソナタはミスが目立つ。しかし、バッハはどれもよかった。最初の「羊は安らかに草をはみ」は、しみじみとよい演奏だと思う。こういうのもありなのか、というちょっとした驚きがあった。ありがとう。そしてフライシャーの今後の人生に幸多からんことを。