勝利湯

「勝利湯」 広島市南区宇品御幸2-3-19

ここは非常に古い建物。外観から、洗い場、脱衣場まで、とにかく古い雰囲気をよく残している。さすがにそれなりに有名らしく、「広島 勝利湯」で検索すると、いくつかの写真がヒットする。場所はちょっとわかりにくいが、宇品二丁目の電停から歩いて1分ほどの距離。

脱衣場では、木製の脱衣ロッカー(とんでもない年代物)が目に付くが、わたしが一番驚いたのは広告。「広島県自動車学校」(これはまだある)の広告が出ているが、まず電話番号の市内局番が2桁しかない。しかも住所が「広島市観音新町」となっていて、区名がない。広島が政令市になったのは1980年でさほど古いことではないのだが、町でこういう表記を見ることはめったにない(現在観音新町は1丁目から4丁目まであるが、その表記もない)。「トヨタ家庭用品」のカンバンにも驚く。冷蔵庫その他の家電用品を月賦で販売する広告である。トヨタが昔そんな事業をやっていたことなどまったく知らなかった。

浴場にはシンプルに中央部に浴槽があるだけだが、泡風呂がついている。湯温は熱め。カランにちゃんとシャワーがついているところがうれしい。このカランやシャワーヘッドも当然年代物である。

そして特筆すべきは浴室の内装。ほとんどの壁が美しい幾何学模様のモザイクタイルで飾られている。そして、広島ではめったに見ないタイル絵。女湯は宮島、男湯は富士山である。ここまで美しいタイル絵はめったに見られない。すみずみに職人の技と昔の雰囲気が残っている。「勝利湯」の名前も時代を感じさせる(ある資料では、この浴場は昭和元年築だとのこと)。

そして入浴時間も変わっていて、13時30分から18時30分。基本、夜間は開いていないのである(水曜休)。完全に近所の、昼間が暇な人しか来られないような設定で、商売として大丈夫なのかと心配になる。番台のおばあさんと掃除をしていたおじいさんもけっこうなお年で、おそらくこの二人が引退したら閉店するのではないか。近々、また訪れなければならない銭湯である。