全国鉄道事情大研究 中国篇2

川島令三『全国鉄道事情大研究 中国篇2』、草思社、2009

今年、草思社からこの本が出たということがまず驚き。まあ会社がつぶれてしまったわけではないことがわかって、ほっとした。このシリーズが何巻まで続くのかは知らないが、なんとしても完結させてほしいものだと思う。

この巻は、「中国篇1」の続きで、主に広島県島根県山口県の路線を扱う。スカイレール山陽線瀬野駅から隣接する住宅地に伸びている、半分ロープウェイ、半分モノレールのような乗り物)のような、マイナーな路線ももれなくフォロー。この路線は住宅地の住民以外、まったく用がないのだが、山の上と下をつないでいるので、景色がきれいなのである。

そして、木次線三江線のところはほとんど涙もの。この路線は、鉄道が走っているのが不思議、というか、会社に走らせる気がまったく感じられない閑散路線。距離が長くて速度は遅く、高速バスの倍くらい時間がかかるような路線である。いつまでも残るような路線ではないので、こういう本に記述が残っていくだけでも貴重なことだ。

著者はとにかく鉄道を残すことだけに関心があるので、採算をまったく無視した増発、高速化提案を連発しているところはいつもどおり。まあそこはご愛敬。そもそも田舎には人がいないし、自動車のほうがずっと早くて便利なところで鉄道の利用者がいるほうが不思議なので、鉄道が多少早くなったり便数が増えたところでどうしようもないのである。おまけにただでさえ、尾道から松江までの高速道路建設計画が進行中なので、鉄道の生き残りはますます厳しい。しかしこの本を読むと、路線がなくなる前に一回でも二回でも乗っておかなければという気にさせられる。