ミンボーの女

ミンボーの女」、宮本信子宝田明、大地康夫ほか出演、伊丹十三監督、ITAMI FILMS、1992

これも伊丹十三の職業モノ。ヤクザというかヤクザに脅される素人とヤクザの関係の話。前半、ホテルが完全にヤクザの食い物にされ、手を変え品を変えて迫ってくるヤクザにやられっぱなしになるところはおもしろい。ヤクザの手口がよく見えるし、それがわかっていなければ、素人は簡単にやられてしまう。面倒なヤクザ対応のホテル内部での押し付け合いも、いかにもありそうな話。

しかし後半宮本信子が出てきて、ヤクザにガツンと当たっていく戦術が成功し始めた後については、確かに気持ちいいことは気持ちいいのだが、ちょっと調子がよすぎるのではないかという気がする。特にヤクザが金額を出して具体的な要求をするところ(その前に、ホテル側がやりとりを録画録音していると言っているにもかかわらず)は、それはやらないでしょうと思う。また、宮本信子を鉄砲玉が刺しに行くというのも、ふつう弁護士を刺しに行くかなと思うのだが・・・(もっとも伊丹十三自身が、この映画のおかげでヤクザに刺されているわけなので、こちらはありえないとはいいきれない)。そもそもいまどきのヤクザは法律を熟知して上手に相手をハメていくもので、素人相手のゆすりに失敗して(しかも殺人未遂つきで)刑務所送りなど、ヤクザのやり方としてもまるっきり下手の部類だろう。

あと、こっちのほうが問題だが、「マルサの女」と比べると、演出のテンポの運びが少し悪いかなという気がする。またヤクザの描き方も類型的で、「マルサの女」の権藤のような余裕のある人物像ではない。敵もそれなりにおもしろくないと、やっつけてもすっきりしないと思うのだが、どうでしょう。